経営の健全性・効率性について
平成30年度の収益的収支比率は86.24%で、前年度と比較して3.69ポイント上昇した。総収益及び地方債償還金を除く総費用はほぼ横ばいだが、地方債償還金が減少しているため収支比率が改善している。比率を求める算式において、地方債の元本償還金は分母に計上されるが、その財源となる一般会計繰入金が分子に計上されないため、収益的収支比率は100%を下回る状況が続いている。企業債残高対事業規模比率は地方債残高が減少し営業収益が増加したため、前年度と比較して19.35ポイント減少した。地方債残高の減少により、比率は緩やかな減少傾向にあるが、今後は流入水量の減少が見込まれるため、水洗化人口の増加対策や施設のライフサイクルコストの最適化等、経営の更なる効率化に努める必要がある。汚水処理原価は60.63円で、前年度とほぼ同額となっている。今後は流入水量の減少が見込まれるため、現在の水準を維持していくためには、汚水処理に係る経費の削減に努めていく必要がある。施設利用率は72.71%で、前年度と比較して1.58ポイント下落したが、類似団体平均値を6.60ポイント上回っており良好な状態にある。水洗化率は89.69%で、前年度と比較して0.88ポイント上昇した。平成26年度から上昇傾向が続いているが、その要因としては水洗化人口の増加の他、処理区域内人口の減少が上げられる。処理区域内人口の減少を要因とした水洗化率の上昇は経営改善に結びつかないため、水洗化人口増加のための対策を進めていくことが重要である。
老朽化の状況について
平成30年度の管渠改善率は0.09%である。本県流域下水道の管渠は全て耐用年数の50年未満であるが、最も古い管は30年以上経過しており、水管橋の経年劣化や硫化水素発生により腐食なども確認されるため、日常点検などにより適正な管理を行い、対策が必要な箇所は計画的な改築を行う。公営企業会計への移行に合わせて長寿命化対策の推進等を盛り込んだ中長期的な経営計画を策定し、実行することにより更新需要の急増を抑制する。なお、処理場の設備については、現在もストックマネジメント計画に基づき、点検・調査及び改築を行っており、今後も引き続き計画的な改築を行う。
全体総括
本県流域下水道事業は、収益的収支比率が100%を下回っているものの、企業債残高対事業規模比率は低下傾向にあり、汚水処理原価や施設利用率も安定した水準にある。しかし、今後、人口減少等に伴う有収水量の減少や施設の老朽化等により、経営の厳しさが増すことも想定される。そのため、令和2年4月の地方公営企業法の財務に関する規定の適用に向け移行準備を進めるとともに、令和2年度中に中長期的な経営計画及び次期ストックマネジメント計画を策定し、流入水量の確保対策や施設の更新需要の平準化などを着実に実施することで、経営の基盤強化に取り組んでいく。