経営の健全性・効率性について
本県では、昭和55年の豊川流域下水道の供用開始に始まり、平成25年の新川西部流域下水道の供用開始に至るまで、11の流域下水道を順次展開してきた。こうした中、平成31年度に特別会計から企業会計へ移行した。流域下水道事業の維持管理費は、市町が流域ごとに維持管理費負担金として負担しており、長期的な視点では収支が均衡することとなる。維持管理費負担金の繰越金が生じている場合は市町との協議により、返還又は不測の事態に対応するための財源としている。流域下水道の維持管理費等の費用と維持管理費負担金等の収益の割合を示した①経常収支比率は100%前後を推移している。また、累積欠損金が生じていないため、②「累積欠損金比率」は0%であり、経営状況については健全な状況を維持しているといえる。経営状況以外については、⑥汚水処理原価は、類似団体と比べて安価となっているが、これは、効率的な管理に努めていることのほか、本県流域下水道の経過年数が40年から10年未満まで幅が大きく、他の類似団体(30年以上)よりも比較的新しい施設の割合が高いため、施設維持費が安価に抑えられていることが要因と推測される。
老朽化の状況について
管路施設は、流域ごとに策定した管渠点検計画により定期的な点検を実施している。現時点では、国土交通省通知に基づく耐用年数(50年)を経過している管渠はない。ただし、一部の腐食しやすい環境にある管渠で劣化が確認されたため、ストックマネジメント計画を策定し、平成28年度から計画的な改築工事を実施している。なお、今後10年には、一部の管渠について耐用年数の50年を経過するため、引き続き点検により劣化の確認を行い、必要であれば適切な修繕や改築工事を実施していく。
全体総括
下水道事業は、地域のまちづくりの根幹的施設として、その他の政策と密接な関連性を有しており、下水道の利用可能区域の整備は、長期的な展望の下、計画的に実施されるが、事業の特性として、汚水量の増加に合わせて計画的に処理場等施設を増設していくものの、初期の段階では、整備に一定のまとまった建設投資が必要となる。一方で、事業収入は、下水道の利用可能区域が拡大して各家庭が下水道へ接続することにより得られるため、汚水量の増加に伴う収入の安定までには長期を要する。各家庭へと繋がる下水道の整備は市町が行っていることから、関連市町との連携をより一層図って下水道の普及促進に努め、事業収入を増加させるとともに、施設の長寿命化によるライフサイクルコストの縮減を行うことにより、経営の健全性・効率性の確保に取り組んでいく。