地域において担っている役割
地域の中核病院として、地域の医療機関及び市と連携のもと、高度な総合的医療を推進するとともに、救急医療や小児医療、リハビリテーション医療などの政策医療を安定的かつ継続的に提供し、医療の質の向上に努めている。特に、将来人口推計に基づく地域医療構想を踏まえ、急性期医療を中心としつつ、今後地域で病床の不足が予想される回復期機能にも一定の軸足を置き、地域包括ケア病棟並びに回復期リハビリテーション病棟を稼働させている。さらに病院併設の訪問看護ステーションの運営も含め、「在宅から入院そして在宅まで」をキーワードに、地域密着型の医療を提供している。
経営の健全性・効率性について
医師の増加により診療体制の充実が図られ全身麻酔の手術件数も増加したほか、地域包括ケア病棟と回復期リハビリテーション病棟の活用が、急性期病棟の稼働率と診療単価の向上につながり、医業収益は増加した。一方で、休止していた病床の再開等に要した人件費の増加や消費税増税等の影響により純利益が減少し、最終的な経常収支は5年連続で黒字を確保したものの、経常収支比率は前年度を下回った。
老朽化の状況について
平成23年10月の地方独立行政法人化以降、設備投資を抑制していた時期もあり、医療機器などの更新がやや遅れている側面がある。建物も最も古い部分では平成元年の使用開始から約30年が経過するなど、法定耐用年数に近づいており、資産の老朽化が進んでいる状況である。近年、財務体質が改善されつつあるので、必要性や採算性を検討のもと、計画的な設備投資計画を策定する必要がある。
全体総括
平成23年10月の地方独立行政法人化以降、診療体制の強化および事務部門の構造改革に取り組み、医療の質の更なる向上と安定した経営基盤の確立へと経営努力を続けている。こうしたなか、令和元年度は第3期中期目標・中期計画計画期間の初年度であったが、黒字決算を維持し、現金・預金残高も前年度末を上回るなど、評価委員会から「計画通りに進んでいる」との評価を受けた。しかしながら、令和元年度末からの新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、感染症病棟の開設など自治体病院としての使命を果たしつつも、厳しい経営状況に直面している。一般病床の稼働率の回復など難しい舵取りが求められるなか、市としても連携を密にし、必要な支援を行っていくものである。