経営の健全性・効率性について
経常収支比率については、平成29年度に地方公営企業法を適用してから毎年100%を上回っており、累積欠損金比率もゼロであることから、おおむね健全な経営ができていると考えられる。また、類似団体と比較しても上回っている。主な収益は、使用料と一般会計からの基準内繰入金となっている。今後は、人口減少等により使用料収入が減少する見込みであり、また、施設の維持管理費及び管渠施設等の更新により支出は増加すると見込まれるため、経営が厳しくなることが予想される。短期的な債務支払能力を示す流動比率については、公営企業への移行直後は低かったが、令和元年以降は上昇している。今後、現金が増加すると見込まれるため、流動比率も上昇すると考えられる。企業債残高対事業規模比率は類似団体平均の半分以下となっているが、建設時に発行した企業債の元金償還が進み、企業債残高が減少した結果である。今後、施設の大規模な更新・改築の時期が到来した際には、企業債の発行が増加し、上昇する可能性もある。経費回収率は毎年100%を超えており、汚水処理費を使用料で賄えているため、適正な使用料であると考えられる。汚水処理原価については類似団体と比較して低水準で推移している。これらの経営指標から経営の健全性・効率性は比較的高いと言える。今後も経常的な収益の維持及び費用の抑制によりこれらの指標を維持していくことが必要である。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率は類似団体平均と比べ低くなっている。地方公営企業法を適用して5年目であり減価償却が進んでいないため低くなっている。今後は減価償却がさらに進むことで上昇すると考えられる。管渠改善率が低いのは、管渠が比較的新しいためである。平成28年から令和2年の間に、安全を確保するためにマンホール蓋を更新し、安定的な稼働を確保するためにマンホールポンプの更新を先行して実施した。令和3年度からはストックマネジメント計画に基づき、計画的な管渠の更新・改築を行っているため、今後は管渠改善率が上昇する見込みである。その更新・改築に必要な財源を適正に確保し、ライフサイクルコストの縮減を図る等、効率的な更新・改築を進める必要がある。
全体総括
現在の経営状態は、経営の健全性・効率性及び老朽化の状況から、比較的安定した状況であると考えられるが、流動比率については若干悪い状況である。企業債の償還ピークを過ぎたため、今後は償還元金が少なくなり、現金預金等の増加が見込める。また今後は、ストックマネジメント計画に基づく施設の更新・改築工事を実施するため、適正な財源確保を行い、財務の健全化を目指す必要がある。特定環境保全公共下水道事業を含めた経営戦略については、令和元年度に見直しを行い、毎年それに基づくモニタリングを実施している。毎年目標の経営指標と比較することで、経営状況を把握し、健全で効率的な経営を目指している。