経営の健全性・効率性について
経常収支比率は、毎年度100%を上回っているが、これは使用料収入等で賄いきれない費用の財源を、繰入金として一般会計から繰り入れているためである。今年度、経常収益のうち使用料収入の割合は約37%と前年度と比べて微増であり、一般会計からの繰入金の割合は約34%と前年度と比べ微減したが、依然として繰入金への依存度が高いままである。また、経費回収率は、89.83%であり、汚水処理費の約1割を使用料収入以外の収入で賄っていることを示している。短期的債務の支払能力を表す流動比率は、37.4%と前年度と比べて減少し、毎年度類似団体平均値を下回っており、支払能力の向上が必要である。企業債残高対事業規模比率については、前年度と比べ減少しており、料金収入に対する企業債残高の割合は順調に減少している。施設利用率は、流域下水道で処理した水量も含まれるため、類似団体平均値を上回っているが、単独公共下水道における施設利用率は、43.3%と低い。水洗化率は87.7%で、類似団体平均値を上回るも、全国平均は下回っている。今後も使用料収入の増加のため、引き続き、水洗化率向上を図るとともに、汚水処理費の低減のため、汚水管に流入する雨水や地下水などの不明水対策に取り組み、有収率向上を図る必要がある。
老朽化の状況について
資産の老朽化度合を表す有形固定資産減価償却率は類似団体の平均を上回っており、施設の老朽化が進んでいる状況である。供用開始年度が平成6年度と比較的新しいが、耐用年数を超えた管渠の割合を表す管渠老朽化率については2.76%であり、類似団体平均値を上回っている。これは、昭和40年代以前に整備した雨水渠など、11.6kmの管渠が法定耐用年数を超えているためであり、これらの管渠については、機能保持に必要な修繕を行っていく。管渠改善率は0.00%であるが、今後は老朽化対策に要する事業費の飛躍的な上昇が予想される。限られた財源の中で計画的な更新を行うため、ストックマネジメント計画や経営戦略に基づいた更新を行う必要がある。
全体総括
現状は、一般会計からの繰入金により、経営を維持している状況が続いている。今後、管渠や施設の老朽化が進むことで、更新費用の増加が見込まれ、企業債償還金についても、今後迎えるピークに向かって増加傾向となるため、厳しい経営状態が続くことが予想される。維持管理費を削減するため、管渠や施設のスペック見直しを検討するとともに、汚水管に流入する雨水や地下水などの不明水対策に取り組み、有収率向上を図っていく。また、財源確保のため、使用料収入の増加に繋がる水洗化率向上の取り組みの継続とともに、他会計からの借入金による円滑な資金調達を継続して行う。厳しい経営状況の中で、計画的かつ安定的な事業推進を図るため、ストックマネジメント計画や個別施設計画、経営戦略を総合的に活用した事業運営が必要である。