経営の健全性・効率性について
収益性については、平成22年度地方公営企業法適用以降、黒字決算を続けており、類似団体平均及び全国平均と比較しても遜色なく、順調な経営状況にあるといえます。これは、流域下水道への接続によるスケールメリットを享受していること、事業が小規模であること及び下水道整備が昭和61年度に終了しており償還済の企業債が多いこと等により、減価償却費や企業債の支払利息が抑制されていることに起因すると考えられます。償還済みの企業債が多く企業債残高が少ないことは、『企業債残高対事業規模比率』の指標からも見てとれます。また、これらを背景に『流動比率』も堅調に推移しており、類似団体平均及び全国平均と比較して高い数値となっています。『経費回収率』については、類似団体平均及び全国平均と比較して高い数値ではあるものの、平成25年度以降100%を切っており、これは下水道使用料で回収すべき経費を賄いきれていない状況を示しています。なお、平成25年度に大きく数値を下げた要因は、経費負担の原則から一般会計が負担すべきとされている経費が、下水道供用開始から30年経過したことによりその対象から外れ、使用料で回収するべき経費となったことによる影響によるものです。『汚水処理原価』が平成25年度より急上昇したのも、これと同様の理由によるものです。
老朽化の状況について
『有形固定資産減価償却率』は、類似団体平均及び全国平均を下回っていますが、これは近年(平成22年度)地方公営企業法適用をした影響によるもので、資産取得時から法適用していたと仮定すれば、実質60%程度になると推計されます。このことは、当該事業の有形固定資産のほとんどが昭和50年代後半に取得した下水道管であり、本来の耐用年数50年のうち30年を既に経過している状態からも見てとることができます。よって、『有形固定資産減価償却率』は、今後かなり早いペースで上昇することが想定されます。管渠老朽化率については、この先15年程度はゼロで推移しますが、下水道管の布設替等を行わなければ、20年後には100%近くまで急上昇することが想定されます。
全体総括
当該事業は、下水道整備を既に終了しているため、現在も含め維持管理が中心の事業となっています。経営の健全性・効率性についての分析から当面大きな問題はないものの、この先の老朽化施設の更新に係る財源について課題があります。観光需要はあるものの、特定環境保全公共下水道の名のとおり、霧ヶ峰の自然保護等を目的に事業を進めた背景があり、更新に係る財源を使用料を主とした利益に求めていくのは困難な状況にあります。一方で下水道管の延長は約9kmとコンパクトで、かつ、流域下水道に接続していることから独自の処理施設を有しておらず、また、地形上、十分な勾配があり頑強な地盤を有していることから、下水道管の更新費用及び維持管理費用は比較的安価になると想定しています。