経営の健全性・効率性について
稲城市の公共下水道(汚水)事業は、昭和56年度から始まり、第四次稲城市長期総合計画に基づいて現在も整備を進めています。平成26年度の稲城市の収益的収支比率はおよそ75%であり、平成23年度から増加する傾向にあります。これは、公共下水道の整備区域の拡大に伴って営業収益(使用料収入等)が増えていること、高金利時に借り入れた企業債の償還が進み、営業外費用(企業債の利子償還額)が減っていることにより増加しているものです。また、平成26年度の企業債残高対事業規模比率は、全国平均及び類似団体平均値のおよそ2分の1と低いものになっています。これは、企業債の償還が進むと同時に、新規で借り入れる企業債の額が少なくなっていることから、残高が減少しているものです。以上のことから、稲城市は使用料収入に対する企業債の残高は順調に減っていますが、まだ公共下水道の整備途中でもあり、歳出(総費用)に対する使用料収入は不足しているという状況にあります。また、平成26年度の特徴としては、下水道施設の老朽化が進み、施設の補修が必要となってきたことが挙げられます。全国平均や類似団体平均値と比べて経費回収率が低く汚水処理原価が高い理由は、使用料収入の伸びよりも汚水処理費に含まれる施設の維持管理費が伸びているためです。平成26年度の水洗化率はおよそ97%ですが、水洗化率の向上を図ることによる使用料収入の確保が、収益的収支比率及び経費回収率の改善には不可欠です。
老朽化の状況について
管渠や人孔(マンホール)等といった下水道施設の耐用年数は50年です。稲城市の公共下水道事業は昭和56年度から開始していますので、下水道施設は比較的新しいものですが、一部の施設(民間企業等からの受贈施設など)について老朽化が進み、維持管理費が増額する傾向にあります。現在も下水道施設の計画的な点検・調査及び清掃を行っていますが、今後は下水道施設の老朽化の進行を踏まえ、第四次稲城市長期総合計画に基づいて維持管理基本計画を策定するとともに、下水道プランに基づいて効率的な下水道施設の長寿命化計画を策定し、施設の適正な維持管理を行います。
全体総括
稲城市の公共下水道(汚水)事業は、整備区域の拡大を図るとともに、今後は老朽化が進む下水道施設について、適切な維持管理を行っていかなくてはなりません。その実現のために、健全な事業運営を図るには、公共下水道への接続促進等に取り組むなど適正な使用料収入を確保するとともに、企業債の償還を進め、効率的な維持管理の執行による汚水処理費の縮小を図ることが必要です。