経営の健全性・効率性について
本市は平成29年度より地方公営企業法の全部を適用し、企業会計に移行した。そのため、各指標は平成29年度以降のみとなっている。(1)①経常収支比率、②累積欠損比率、③流動比率、④企業債残高対事業規模比率について本市は、昭和後期から平成初期にかけて短期間に集中して下水道整備を実施した。また、市域が淀川、安威川といった一級河川の沿岸部に位置し、土地が低く、工事において地下水等への対策が必要となり、工事費が嵩むこととなった。現在、整備当時に発行した企業債の償還のピークを迎えていること、また平成17年度以降、毎年資本費平準化債を発行していることから、企業債の元利償還金が高止まりしている。平成30年度決算では、経常収支比率が105.06%と前年度に引き続き黒字を確保できており、また企業債の発行額を企業債の償還額以内に抑制し、企業債残高対事業規模比率も改善したが、上記のとおり企業債の元利償還金が高止まりし、流動負債(1年以内償還予定の企業債)が過大となっているため、流動比率が類似団体平均値と比較して低い水準となっている。(2)⑤経費回収率、⑥汚水処理原価、⑦施設利用率、⑧水洗化率について経費回収率は前年同様100%となっているが、これは分流式下水道に要する経費に対して一般会計負担金を受け入れしているためであり、当該負担金を除くと経費回収率は95.79%となり、下水道使用料で汚水処理経費を賄えていない状態である。これは汚水処理原価における汚水資本費(減価償却費及び企業債利息)が高いためであり、汚水処理原価は類似団体平均値と比較しても高くなっている。施設利用率は、本市が流域関連公共下水道であり、市管理の単独の処理場を有していないことから、計上していない。水洗化率は前年度横ばいとなっており、水洗化向上に向けて、職員による未水洗化世帯への戸別訪問、水洗便所皆増助成金、水洗便所改造資金貸付金等の制度を活用して、啓発に努めている。
老朽化の状況について
本市の管渠において、標準耐用年数とされる50年を経過した管渠はないものの、10年後には現存する管渠の約7%、20年後には管渠の約50%が50年を経過する見込みであり、今後急激に老朽化が進み、老朽化対策にかかる費用が増大すると予測している。平成30年度は施工より30年以降経過した主要な管渠(口径800㎜以上)を中心にカメラ調査を行い、緊急度の判定を実施した。調査の結果、大規模な改築更新、修繕が必要な箇所は発見されず、部分的な補修での対応となった。なお、平成30年度までに公共下水道整備に投入した事業費は900億円を超えており、その全てを標準耐用年数で改築更新することは困難であることから、令和2年度にストックマネジメント計画を策定し、計画に基づく効率的な調査、改築更新、修繕を進める体制を構築する。
全体総括
企業の経費削減に向けた節水努力や一般家庭の節水型機器の普及により有収水量は減少しており、それに伴い下水道使用料も減少していくものと予想されるものの、現在ピークを迎えている企業債の元利償還が順次終了することから、経常収支比率等の指標は改善していくものと思われる。一方で、過去集中的に整備した管渠の老朽化対策、改築更新等の費用、昨今頻発する大雨等の災害に備えた雨水整備の拡大による工事費等、更なる費用の増加が見込まれることから、財政見通しは引き続き厳しい状況になると予測している。今後は、令和元年度に策定した摂津市上下水道ビジョン及び摂津市下水道事業経営戦略に基づき、収支構造の適正化及び経営基盤の強化を図る。