経営の健全性・効率性について
「経常収支比率」は、全国及び類似団体平均を下回っているものの、経常収益が増加したことに伴い、前年度を上回る結果となった。なお、経常費用には、福島第一原子力発電所の事故に起因する放射性物質を含んだ汚泥処理に係る費用が含まれており、その費用については、東京電力ホールディングス㈱に対して損害賠償請求を行っている。「流動比率」は、100%を超えており短期支払い能力は十分に備えているが、「企業債残高対給水収益比率」が増加傾向にあることから、引き続き今後の推移に留意が必要である。「給水原価」は、全国及び類似団体平均を上回っており、今後も更なる費用の削減に努めていく。なお、上記に記載のとおり、経常費用には、放射性物質を含んだ汚泥処理に係る費用が含まれている。「施設利用率」及び「契約率」は、増量があったものの契約水量の減量の方が多かったことから、前年度を下回る結果となり、全国平均なども下回っている。今後、大口企業の廃止など給水量の減少が見込まれることから、新たな需要の掘り起こしに努めていく。
老朽化の状況について
「有形固定資産減価償却率」及び「管路経年化率」は、全国及び類似団体平均を下回っているものの、増加傾向にある。令和2年度に一部管路の更新を実施したところではあるが、今後も更新時期を迎える管路の増加が見込まれている。そのため、定期的に試掘調査などを行い、劣化状況に基づく計画的な管路網等の更新、工法等の検証及び見直しにより、投資費用の平準化等を図り、計画的かつ効率的な更新を行う必要がある。
全体総括
経営の健全性・効率性は、全国平均及び類似団体平均を下回る指標が多いものの、経常収支比率が引き続き前年度を上回る結果となり、安定的に推移している。しかし、今後、大口企業の廃止などに伴う収益の減少や、高濁度対応の継続、老朽化施設の更新及び耐震化対策など、経費の増大により厳しい経営となることが予想される。このことから、安定的な経営を継続するため、工業用水道事業の中長期的な基本計画である「経営戦略」を令和2年度に策定したところである。経営戦略で設定した課題と取組を踏まえ、今後も計画的に老朽化施設の更新を図るとともに、維持管理経費等のコストの見直しや新たな給水先の確保等の取組及び料金適正化の取組などにより、経営基盤を強化し、引き続き工業用水道の安定供給に努め、地域産業に貢献していく。