経営の健全性・効率性について
埼玉県が行っている8つの流域下水道の維持管理は、受益者負担の原則に基づき、関係する市町の下水道使用料や一般財源を原資とした維持管理負担金で賄われている。流域下水道の維持管理費等の費用と維持管理負担金等の収益との割合を示した「①経常収支比率」は100%を超えており、単年度収支は黒字で累積欠損金も発生していないため、経営状況は安定しており健全といえる。しかし、電気料単価が下落している一方で、労務単価の上昇や施設の老朽化に伴い委託料や修繕費が増加してきており、今後も収支改善を図る取組が継続的に必要である。また、短期的な債務に対する支払い能力を示す「③流動比率」は、H26から災害に備えた修繕引当金38億円を流動負債に計上しているため、100%前後の数値となっているが、支払能力に問題はない状況である。「④企業債残高対事業規模比率」は、施設等の整備がほぼ終了し企業債残高がH12をピークに減少していること及び会計基準改正等に伴い一般会計負担分を除外しているため、数値は低下しているが、老朽施設の改築更新を順次行っていくため、残高は今後徐々に増加するものと見込まれる。「⑥汚水処理原価」のH23~H25には、維持管理負担金の返還等の特殊要因が含まれており、実質的な汚水処理原価は、H23:29.38円、H24:30.32円、H25:32.40円であり、32円前後を維持している。「⑦施設利用率」は、晴天時一日平均処理水量ではなく、晴天時一日最大処理水量で算出すると87%を超えており、施設規模は適正であると考えている。
老朽化の状況について
有形固定資産の減価償却については、会計基準改正等に伴い補助金を財源として取得した資産についても、H26から減価償却費を計上することとしたため、「①有形固定資産減価償却率」の数値が急増しているが、下水道管渠の耐用年数は50年と長く、本県流域では管路の更新期を迎えていないため、「②管渠老朽化率」は0%となっており、「③管渠改善率」も低率に留まっている。処理場やポンプ場などの機械・電気設備については、耐用年数が10年から20年と短く既に更新期を迎えていることから、ライフサイクルコストの縮減と年度間予算の平準化を行う長寿命化計画を策定し、計画的に改修・更新を進めている。また、管渠や処理場などの土木・建築施設についても、H28からストックマネジメント計画の策定に着手し、H30までに計画を策定する予定であり、計画的な改築更新に取り組んでいく。
全体総括
各経営指標の状況から、現時点での経営状況は、健全であるといえる。しかし、今後の流域下水道事業を取り巻く環境については、人口減少や節水機器の普及により処理水量の減少及び施設の老朽化による改修・更新費用の増加、労務費の上昇、電気料金の変動による維持管理費の増加が見込まれる。そのため、計画的な修繕の実施、包括的民間委託の拡大及び省エネ機器への転換等によるコストの縮減を進めるととともに、流域市町に対して接続率の向上を促すなど処理水量の増加を図る。さらに、バイオガス発電・太陽光発電の導入や下水汚泥の共同処理化事業などについても、費用対効果を見極めながら積極的に取り組んでいく。また、処理原価や流域ごとの収支状況を踏まえた維持管理負担金の設定に努めていく。