経営の健全性・効率性について
本県では、熊本北部流域下水道、球磨川上流流域下水道及び八代北部流域下水道の三つの「流域下水道事業」を実施している。①収益的収支比率:平成24年度にかけ、低下してきたのは、繰越金を計画的に減少させるためで、関係市町村からの維持管理負担金を見直したことによるものである。見直し後も有収水量の増加や資本費分(建設事業に伴う起債償還額のうち交付税措置の適用がない部分)の回収などにより比率は上昇傾向にある。④企業債残高対事業規模比率:必要最小限の投資に努めることにより、企業債残高は着実に減少しており、全国平均及び類似団体平均値よりも低い値となっている。なお、企業債残高は関係市町村からの維持管理負担金の3年弱分の規模である。⑥汚水処理原価:全国平均及び類似団体平均値よりも下回っており、効率的に処理している。⑦施設利用率:高度処理化を含む改築更新工事を実施中のため、現有施設の一部が使用出来ない状況である。併せて、処理区域の編入等を見込んで水処理施設の増設を行っているため、利用率が低くなっている。今後は、処理区域の編入や接続率の向上等により改善される見込みである。⑧水洗化率:比率は着実に増加しており、今後も100%を目指し、接続率の向上に努める。
老朽化の状況について
県の3流域のうち、一番最初に供用開始した処理場が平成元年3月であり、耐用年数を経過した管渠は無く、現在のところは、計画的に管渠内清掃及びカメラ点検を毎年度実施しており、一部の修繕程度で済んでいる。今後、管渠の老朽化が進行することが予想されることから、平成27年度の下水道法改正に基づき、管渠を含む下水道施設全体を対象とした維持修繕及び改築に関するストックマネジメント計画を策定し、対応していく予定としている。なお、電気設備や機械設備については、点検や分解整備により長寿命化を図っているが、耐用年数を超過したものについては、長寿命化計画に基づき改築更新を進めている。
全体総括
流域下水道事業を取り巻く経営環境は、人口減少等により流入水量が鈍化する一方、今後、定期的な改築更新に係る費用が必要となるなど厳しさを増すことが予想される。このような経営環境の中、今後も住民生活に不可欠なサービスを持続的に提供していく必要がある。そのためには、経営基盤の強化(投資の優先度の把握、維持管理費の節減等)や財政状況の把握(資産や負債など的確な把握等)に努めていくと伴に、経営戦略の策定や公営企業会計の導入についても準備を進めていく。