経営の健全性・効率性について
平成23年度の収益的収支比率が後年に比べ大きく下回っている理由は、この年度に8千万円規模の公的資金補償金免除繰上償還を実施したこと、約2億8千万円規模の中継ポンプ場改修工事を実施したためである。繰上償還の原資は民間資金からの借換債となり、資本的収入となるため、算出の分母となる地方債償還金が増加したことと、改修工事による費用増大により、収益的収支比率が低い水準となっている。しかしながら、公的資金補償金免除繰上償還により、6.0%以上の利率の企業債はなくなり、利子削減額は約1千2百万円となるため、成果があったと分析できる。また、改修工事については、施設の震災対策を推進し、機能向上を図るとともに、施設の長寿命化を図りつつ計画的かつ効率的な維持管理を実施することで、重大事故の発生や機能停止を未然に防止するとともに将来発生する費用抑制という視点からも成果があると言える。当市の収益的収支比率を他の類似団体と比較すると、おおよそ高い比率となっている。また、毎年微増ではあるが増加傾向のため経営改善に向けた成果は上がっていると言える。企業債残高対事業規模比率は良好であり、類似団体と比較しても現時点では後年度への過度の負担はないと言える。経費回収率については、類似団体の平均値を下回っており、現状では整備した下水道施設が適切な料金収入に結びついているとは言えない状況である。改善方法はいくつかあるが、汚水処理原価が平均値より高いことから、より一層の接続率向上、有収水量の増加を図ることで汚水処理原価を抑え、経費回収率上昇に繋げていくことが必要である。
老朽化の状況について
当市は昭和48年度から下水道施設の建設を始めており、管渠の標準耐用年数を超えている管渠はない状況であるため、管渠についての更新投資・老朽化対策はまだ行っていない。そのため、管渠改善率が0%となっている。管渠よりも耐用年数の短い汚水中継ポンプ場については既に長寿命化等に取り組んでおり、改築を行っているので、今後はこれから耐用年数を迎えることになる管渠について長寿命化等を行っていくよう計画を策定していく予定である。
全体総括
当市は、近隣の類似団体と比較して数値が大きく差がついている項目はなく、ほぼ同等の数値を示しており、公共下水道経営が大きく破綻していることはないと分析できる。しかしながら、経費回収率等の改善をすることがより健全な経営に結びつくことも明らかであり、今後は管渠の長寿命化を計画するとともに、公共下水道事業への地方公営企業法適用後の各項目における数値状況を踏まえ、経費回収率を向上させる施策を検討する必要がある。