経営の健全性・効率性について
令和2年度より公営企業会計に移行し、初年度となる決算においては黒字経営となり「経常収支比率」は100%を超えているものの、経常収益のうちの約半分は一般会計からの繰入金によるものである。今後も、効率的な経営による費用の縮減により「汚水処理原価」の抑制を図るほか、さらなる「水洗化率」の向上を図り使用料収入の確保に努めるとともに、適正な料金体系の検討により「経費回収率」を改善していく必要がある。また「流動比率」についても100%を下回っているが、流動負債のほとんどが企業債償還額であることから、今後は償還額の減少に伴い改善していくと見込んでいる。施設の処理能力や耐用年数等も踏まえ、隣接する農業集落排水施設の一部を段階的に公共下水事業へ統廃合することを検討中であり、適正で効率的な「施設利用」を検討し、経営の合理化を図っていく予定である。
老朽化の状況について
公営企業会計への移行により、減価償却累計額がゼロから始まっているため、有形固定資産減価償却率は低い数値となっている。管渠については、野村処理区(平成16年度供用開始)・宇和処理区(平成18年度供用開始)ともに供用から14~16年の経過であり、現時点で早期に対策する必要はない。しかしながら、今後耐用年数を超える機器の発生が見込まれることから、下水道施設全体を一体的にとらえた下水道ストックマネジメント計画の策定を進めるとともに、投資の平準化及びコスト縮減を合理的に進める必要がある。
全体総括
平成11年度に着手した当市の公共下水道事業は、令和2年度末で整備率81.3%となっており、現在も未普及地域の解消に向けて整備事業に取り組んでいる。今後は、少子高齢化の進行に伴う人口減少などにより使用料の減収が想定される中、施設・設備の老朽化による修繕費用等の増加が見込まれることから、これらを総合的に勘案した下水道事業経営が求められている。将来にわたって安定的に下水道事業を継続していくために、令和2年度に策定した経営戦略に基づき、下水道への接続推進、使用料の適正化、処理場の統廃合、施設の長寿命化等に取り組み、経営基盤の強化に取り組んでいく。