経営の健全性・効率性について
当市の公共下水道事業は、①収益的収支比率は100%未満の状況が続いており、使用料収入で費用を賄えていない状況である。平成28年度から下降していたが、平成30年度は企業会計移行に伴う打切り決算により、総費用及び地方債償還金のうち4月支払分が未払となったため比率が上昇した。類似団体平均値と比較して④企業債残高対事業規模比率は高く、⑤経費回収率は低く、⑥汚水処理原価はやや高く、⑧水洗化率はやや低くなっている。④企業債残高対事業規模比率は、企業債残高は減少したものの、打切り決算により4月以降の料金収入が未収となったため、大きく上昇した。⑤経費回収率が低い要因は、使用料収入が事業規模に対して少ないためである。使用料収入を分析すると、平成30年度末現在の使用料単価(1㎥の水を流すことで発生する使用料)は75.9円である。これに対し、⑥汚水処理原価は179.2円、そのうち維持管理に要する費用(1㎥の水を処理するのに必要な費用等)は83.8円で、使用料単価よりも7.9円高くなっており、その差額は一般会計からの繰入金で賄っている。なお、⑤経費回収率は、打切り決算により4月以降の料金収入が未収となったため低下した。⑥汚水処理原価のうち、管渠の建設時に借りた企業債の償還の全てを使用料で賄うのは難しいと考えており、一般会計からの繰入れが必要だと考えている。しかし、維持管理に要する費用のみでも使用料単価と7.9円の差が生じている。そのため、まずはこの差を無くす必要がある。⑧水洗化率が低くなっている要因は、新たに供用開始した区域における接続率が既存の処理区域に追い付いていないためである。接続率が低い地区で重点的に接続促進訪問を行う必要がある。
老朽化の状況について
当市の公共下水道事業は、平成30年度までは地方公営企業法の非適用企業であるため、①有形固定資産減価償却率と②管渠老朽化率は値を算出することができず、明確な数値としての老朽化具合は不明である。しかし、当市の公共下水道は平成元年度から事業を行っており、事業開始から30年程度しか経過していないことから、老朽化は比較的進んでいないと考えられる。ただし、平成初期に布設した管渠の中にはひび割れ等の不具合も見られており、今後、そのような管渠はますます増えていくと見込まれる。今後は、企業会計に移行し、老朽化についての数値も算出されることとなるため、供用開始区域の拡大だけでなく、既存の管渠の補修・改築を適時に行う必要がある。
全体総括
当市の公共下水道事業の経営状況は、決して良いとは言えない。上記のとおり、使用料収入が低いことにより、必要な費用が賄えていないことが大きな要因である。現在は、事業開始から30年程度しか経過していないため、管渠の補修等の費用は大きくない。しかし、今後10年20年と経過するにつれて補修費用が増加し、さらに維持管理に要する費用が高くなると、ますます使用料単価との差が乖離してしまうことになる。今後の課題は、汚水処理原価を下げること、使用料収入を上げることの2つであるが、汚水処理原価については、汚水処理を県の浄化センターで行っているため、その維持管理費を当市の努力で下げるのは困難である。そのため、接続促進、収納対策、使用料の見直し等により使用料収入を上げていくことが必要である。経営戦略については令和2年度に策定予定である。