経営の健全性・効率性について
経常収支比率は、H29の111.08%から、H30は118.32%とほぼ横ばい状態である。上水道事業は直近の4年間の推移では多少の変動はあるものの平均値と比較しても高い水準を維持していたが、H29は赤字事業であった旧簡易水道事業を統合をしたため平均値とほぼ同じ水準となった。将来的には、人口減少による給水収益の減少が予想され、かつ、高度経済成長時に大量に埋設された管路が耐用年数を迎え、劣化してきたことによる修繕費用が増えることが予想される。今後、経営の健全性を維持していくため、水道事業への加入促進と更なる費用の削減に努めていく必要がある。流動比率については、H29の364.60%から、H30は453.38%と88.78ポイント増加し、昨年度より改善された。また、企業債残高対給水収益比率については、H29の478.49%から、H30は459.23%と19.26ポイント減少したがほぼ横ばいである。流動比率が改善した原因は、流動負債の企業債及び未払金が減少したためである。これは一時的なものに過ぎず、どちらの比率も、旧簡易水道統合による企業債の増加が大きな影響を与えている。料金回収率及び給水原価、施設利用率については、平均値に比べ良好な数値を維持している。一方、有収率については、H29は79.09%、H30は79.51%でほぼ横ばいである。これは、有収率が平均値を下回っていた旧簡易水道事業を統合したことが原因である。今後もより一層の漏水防止対策、特に旧簡易水道事業エリアの漏水対策に努めていく必要がある。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率について、50%付近で推移していたものが、H29に創設年度がS43~54年の旧簡易水道事業と統合したため42%まで減少した。当該指標については、平準化を考慮した更新を行えば45%前後で推移すると考えられる。今後も、持続的な更新を行い、現在の水準を維持していくことが重要と考えられる。また、管路経年化率については、S40~50年代に整備された管路が更新時期を迎えるとともに施設の老朽化が進行していることを反映し、H25から徐々に増加していたが、H29に旧簡易水道事業と統合したため8.38%と減少したが、H30は10.52%まで増加した。管路更新率については、H29の0.50%から、H30は0.53%とほぼ変わらず、直近の5年間は1%未満にとどまっている。老朽化の進行に更新が追い付いていない状況である。
全体総括
経常収支比率及び料金回収率については、いずれも100%を超え、平均値と同水準又は上回る水準を維持している。しかし、施設利用率が高いにも係わらず有収率が低水準にあるため、収益につながっていない可能性が高い。これから人口減少による給水収益の減少も予想され、収益を増加させるために有収率向上に早急に取り組んでいかなければならない。また、老朽化の状況について、今後は管路経年化率が上昇していくことが予想されること、また、管路更新率が1%未満の低い水準で推移していることから、更新のペースが追い付かず老朽化が加速していくことは明白である。管路の老朽化は、水道水の安定供給に直結するもので、かつ、有収率が向上しない要因でもあるため、必要な更新への投資が必要である。