経営の健全性・効率性について
平成29年度より下水道事業に地方公営企業法を適用したため当該年度のみの数値となっている。「①経常収支比率」は、100%を下回っており、収入で費用を賄えていない状況となっている。「②累積欠損金比率」は、使用料等で経費を賄えていない状態のため累積欠損金が発生しており、厳しい経営状況となっている。「③流動比率」は、平均値よりも高いが、建設改良費に充てた企業債償還金の割合が大きいため、短期での支払能力が乏しい結果となっている。「④企業債残高対事業規模比率」は、平均値を大きく上回っており、施設整備の過大投資に加え、使用料収入の減少が主な要因として考えられることから、抜本的な対策が必要となっている。「⑤経費回収率」は、1人当たりの汚水処理費が集合処理よりも高額となり、収入で費用を賄えていない状況となっている。「⑥汚水処理原価」は、汚水量に対して1人当たりの汚水処理費が大きいことが原価が高い要因となっている。「⑦施設利用率」は、中山間地域の空家等の増加により60%程度と低く効率的な運用とは言えない状況でとなっている。「⑧水洗化率」は、平均値を上回っているが、今後、更なる人口減少により、使用料収入は減少傾向となることが想定される。
老朽化の状況について
「①有形固定資産減価償却率」は、地方公営企業法適用前の減価償却累計額を控除した額を年度開始時点の資産として計上しているため、減価償却累計額が小さく、平均値を大きく下回った。「②管渠老朽化率」及び「③管渠改善率」は、合併処理浄化槽による個別処理事業であり、集合処理のような管渠整備を行っていないため、該当する値はない。平成11年度から施設整備を行っており、事業初期の浄化槽は設置してから18年が経過していることから、ブロワーや汚水ポンプの修繕費等で維持管理費が増加傾向となっている。中山間地域での事業であるため、今後より一層の少子高齢化や人口減少が予想される中で、施設の老朽化と維持管理費の増加が懸念される。
全体総括
下水道事業に地方公営企業法を適用し、平成29年度の決算を行ったことで、本市下水道事業における経営面での様々な課題が浮かび上がった。合併処理浄化槽による事業の場合、使用料で維持管理費を賄えておらず、今後、更なる少子高齢化や人口減少により使用料収入の増加が見込めない中で、費用削減を図る必要があるが、今後も他会計繰入金等に依存しなければならない状況が続くことが見込まれる。今後、使用料収入の減少や施設の老朽化による費用の増加が見込まれる中で、下水道事業の持続と安定した経営を行うためにも、『酒田市下水道事業経営戦略』による中長期的な財政マネジメントをより強力に実行する必要がある。