経営の健全性・効率性について
令和元年度の収益的収支比率は89.29%で、前年度と比較して3.05ポイント上昇した。総収益及び地方債償還金を除く総費用はほぼ横ばいだが、地方債償還金が減少しているため収支比率が改善している。比率を求める算式において、地方債の元本償還金は分母に計上されるが、その財源となる一般会計繰入金が分子に計上されないため、収益的収支比率は100%を下回る状況が続いている。企業債残高対事業規模比率は地方債残高が減少し営業収益が増加したため、前年度と比較して3.2ポイント減少した。地方債残高の減少により比率は緩やかな減少傾向にあるが、今後は流入水量の減少が見込まれるため、収益の確保対策や施設の長寿命化等、経営の更なる効率化に努める必要がある。汚水処理原価は58.67円で、前年度と比較して1.96円改善しているが、類似団体平均値より8.03円上回っており、また、今後は流入水量の減少が見込まれるため、さらなる水量の確保や経費の削減に努めていく必要がある。施設利用率は73.04%で、前年度と比較して0.33ポイント上昇した。類似団体平均値を5.83ポイント上回っており良好な状態にある。水洗化率は90.46%で、前年度と比較して0.77ポイント上昇した。平成26年度から上昇傾向が続いているが、その要因としては水洗化人口の増加の他、処理区域内人口の減少が上げられる。処理区域内人口の減少を要因とした水洗化率の上昇は経営改善に結びつかないため、水洗化人口増加のための対策を進めていくことが重要である。
老朽化の状況について
令和元年度の管渠改善率は管渠更新等の実績がなく、0%であった。本県流域下水道の管渠は全て耐用年数の50年未満であるが、最も古い管は30年以上経過しており、水管橋の経年劣化や硫化水素発生により腐食なども確認されるため、日常点検などにより適正な管理を行い、対策が必要な箇所は計画的な改築を行う。また、10数年後には管渠の耐用年数を迎え、更新費用の増加が見込まれるため、受益者への費用負担の平準化を考慮しながら適切に更新を行っていく必要がある。なお、処理場の設備については、現在もストックマネジメント計画に基づき、点検・調査及び改築を行っており、今後も引き続き計画的な改築を行う。
全体総括
本県流域下水道事業は、収益的収支比率が100%を下回っているものの、企業債残高対事業規模比率は低下傾向にあり、汚水処理原価や施設利用率も安定した水準にある。しかし、今後、人口減少等に伴う有収水量の減少や施設の老朽化等により、経営が一層厳しくなることが想定される。そのため、令和2年4月から地方公営企業法の財務に関する規定を適用し、令和2年度中には、中長期的な経営計画及び次期ストックマネジメント計画を策定する予定であり、財務諸表を用いた経営分析や、施設の更新需要の平準化などを着実に実施することで、経営の基盤強化に取り組んでいく。