経営の健全性・効率性について
平成28年度の収益的収支比率は80.98%で、地方債の元本償還に充てた一般会計繰入(資本的収支)が多いため100%を下回る状況が続いている。この収益的収支比率について、前年度と比較すると、一部処理区の維持管理負担金単価を引き下げたこと、平成27年度決算における余剰金を流域関連市町に返還していることなどから営業収益が減少し、6.63ポイント低下し、経営が厳しくなっている。また、企業債残高対事業規模比率も地方債残高の減少額よりも営業収益の減少額が大きかったため、前年度よりも10.18ポイント上昇し、類似団体平均値より39.02ポイント上回り、この点でも経営の厳しさが増している。一方、汚水処理原価は61.86円、施設利用率は70.61%といずれも類似団体平均値よりも良好な状況にあるとともに、水洗化率も87.95%と前年度よりも0.93ポイント上昇し、類似団体平均値を初めて超えた。営業収益の減少に伴い収益的収支比率や地方債残高事業規模比率が悪化しており、さらに今後、人口減少に伴う有収水量の減少なども想定されることから、コスト削減や資源の有効活用を図るとともに、維持管理負担金の適正な単価設定を検討し、経営改善に努める。
老朽化の状況について
平成28年度の管渠改善率は0.24%である。本県流域下水道の管渠は全て耐用年数の50年未満であるが、最も古い管は30年以上経過しており、水管橋の経年劣化や硫化水素発生により腐食なども確認されるため、日常点検などにより適正な管理を行い、対策が必要な箇所は改善を図る。10数年後には管渠の耐用年数を迎えるため、企業会計への移行に合わせて必要な財源確保を考慮した経営計画を作成し、今後の更新費用の増大に備える。なお、処理場の設備については、現在もストックマネジメント計画に基づき、点検・調査及び改築を行っており、今後も引き続き設備の改善を図る。
全体総括
本県流域下水道事業は、収益的収支比率が100%を下回り、企業債残高対事業規模比率も前年度より上昇しており、経営が厳しくなっている。今後も、人口減少等に伴う有収水量の減少や施設の老朽化等により、経営の厳しさが一層増すことが想定される。そのため、平成32年4月の企業会計化に向け移行準備を進めるとともに、適正で平準化した負担金単価の設定や施設の処理能力の適正化などを盛り込んだ平成32年度からの経営戦略策定に向け検討し、経営の基盤強化に努める。