経営の健全性・効率性について
当市の特定地域生活排水処理事業(以下「市営浄化槽事業」という。)は、公共下水道事業・特定環境保全公共下水道事業・農業集落排水事業・個別排水処理事業の4事業と合わせて、1つの「下水道事業」として経営している。市営浄化槽事業は、上記の4事業以外の地区の汚水等を処理する事業で、平成22年度から開始している。また、浄化槽使用料は人槽による定額制となっており、使用料体系については公共下水道事業の料金体系と均衡するように設定されている。そのため、総務省が定める繰出基準での一般会計繰入金では収支が不足するため、結果として収支不足分を公共下水道事業からの繰入れで賄っている状況である。①が100%前後であるにもかかわらず、⑤が50%台で推移しているのはそのためである。③の流動比率が年々低下しているが、これは、浄化槽の設置に伴う企業債の借入れにより、翌年度償還の元金が増加しているためである。⑤は、設置及び寄贈された浄化槽の基数の増加により、維持管理に係る経費が年々増加し、汚水処理原価も増加していることから、経費回収率は減少傾向にある。⑦の施設利用率については、平成29年度に現在処理能力の数値を見直し、それ以後は類似団体とほぼ同じ水準で推移している。
老朽化の状況について
当市の市営浄化槽事業は、平成22年から開始しているため、当市で設置した浄化槽については、28年の法定耐用年数を超えた施設はないが、寄贈の浄化槽については、法定耐用年数に近づいている浄化槽もある。浄化槽について、老朽化した場合、構造的に更新(取替)による対応は難しく、基本的には修繕により対応していくことを想定している。そのため、事業開始間もない事業ではあるが、老朽化施設の修繕を念頭に置いた計画的な維持管理体制の構築が必要となる。
全体総括
下水道事業においては、「佐賀市上下水道ビジョン」及び「佐賀市下水道事業経営戦略」を策定し、将来にわたって安定的に事業を継続していくこととしている。市営浄化槽事業は、経費回収率が低く、設置基数が増加すれば、収支不足も増加する。また、上記の記載のとおり、今後は、寄贈された浄化槽の修繕費の増加が想定されるが、現時点では修繕への国庫補助等は見込めず、事業開始間もないことから資金の内部留保も十分ではない。今後、収支不足の構造的な問題と併せて、増加する修繕費に対応できるよう、経費の削減に取り組むとともに、行政経費としての負担割合等を整理し、料金の単価設定や改定についての検討などが必要である。