経営の健全性・効率性について
①収益的収支比率は対前年度比で21.7ポイントの減少となった。これはH26、H27において法適用後の持続的安定経営補助金として計150,000千円の繰入があったが、H28においてはこの臨時的繰入がなかったためであり、全国平均を下回る結果となった。収益的収支不足額については簡易水道事業会計基金積立金を取り崩し補填を行っている。④企業債残高対給水収益比率は年々低下傾向にあるが、全国平均値よりも依然高い水準にある。企業債残高は年々減少傾向にあるが給水収益が年々減少しているためである。⑤料金回収率は、H27まではほぼ横ばい状態であったものの、H28においては対前年度比2.4ポイントの減少となった。給水収益の減少と費用の増加が要因であり、今後も30%台を推移すると予想される。⑥給水原価は、全国平均や類似団体の約2倍という高い値となっている。有収水量が減少する中、H28においては簡易水道事業統合に係る経費の増、人件費の増及び機械設備の営繕工事の増が主な要因である。⑦施設利用率は、人口減少にもかかわらずほぼ横ばいの値となったが、平均値については年々減少傾向にある。⑧有収率低下の原因は配水管等の老朽化による漏水であるが、80%を下回っていることで本会計の経営に影響を与えている。H28において漏水箇所の修繕をある程度実施したこともあり、有収率については今後改善すると予想される。本会計は主たる収入である給水収益が少なく一般会計繰入金に依存している会計であり、統合後もこの経営体質は変わらず、水道事業会計全体を圧迫することが予想される。繰入金のうち、約50%は企業債元金償還金のための繰入であり、収益的繰入は簡易水道高料金対策に係る経費が大半であり、事業統合6年目以降にはこの繰入が年々縮小されることで、さらなる経営圧迫となることが予想される。
老朽化の状況について
②管路全体の約80%はH9~H18に行った支障移転工事により布設したものであり、老朽化率及び経年化率の度合は比較的低い。来年度以降はこの支障移転工事により布設替した管が加わりはじめるため、年々増加率が上昇する。③管路更新率はH28は0%であり、比較的新しい管路が多いため、ここ近年は支障移転工事のみに留まっている。管路の更新計画については、H28末において今後10年間の投資計画を立てたが、これらを着実に行い計画的な更新をしなければ年々老朽化率及び経年化率は年々上昇してる。
全体総括
本会計は平成28年度末に会計を水道事業会計へ統合し、地方公営企業法全部適用による運営を行うこととなった。統合前の本簡易水道事業は、元々給水人口が少なく、給水収益を多く見込むことができず人口減少とともに給水収益は減少している。よって、料金回収率が低く、統合後の経営を圧迫することが予想される。今後は新たに減価償却費等が発生し水道事業会計の損益に影響を及ぼすことになる。また、浄水の全量を自己水源から得ていることから、多くの設備を多く抱えており、その修繕費が今後増加することが予想される。給水収益だけでは補えない収支不足を繰入金にたよってきたが、これは統合後も変わることはない。しかし、統合により上水道となり、繰入金の縮減や有利な起債借入等ができなくなるため、今後管路更新を行うための十分な資金がまかなえないことが予想される。現状の資金繰りを見ると料金回収率が低く、投資に回す資金に余裕がない。また、管路更新計画の精度を高めて将来の更新需要を算出し、必要な財源を確保のための料金見直しと適正な企業債借入及び繰入金の確保に努めていく必要がある。