地域において担っている役割
宇陀市は東和医療圏の中山間地に位置し、広大な面積で交通の便が良くない地域が点在しています。このような状況のなか、宇陀市民のほか、曽爾村、御杖村、東吉野村等の市外患者を幅広く受入れ、診療所への医師派遣など宇陀地域の医療を広く担っています。近年、内科系開業医の閉院が相次ぎ、医療資源が減少しています。そのため当院は、本来の2次救急医療機関の機能のほかに地域医療のセーフティネットとしての外来機能およびプライマリケアの充実が求められています。
経営の健全性・効率性について
県下最大の2病棟87床を設置している地域包括ケア病床の稼働が引き続き順調であり、全体の病床稼働率が75%を超えている状況です。また、入院1人あたり収益は昨年度からは微減したものの、外来1人当たり収益が10,000円を超えるなど類似病院平均値よりもともに高い状況となっており、単年度の収支を示す経常収支比率が98.3%と収支均衡が見えるところまできています。一方で、累積欠損金比率が平成25年に新病院を建設したことにより減価償却費が増加したため高い状況にあり、また職員給与費対医業収益比率は類似病院の平均値を初めて下回ったものの、依然高い状況となっているため引き続き経営改善への努力を続けていきます。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率は、平成25年度に新病院が完成したことによる減価償却費増加の影響が平成26年度以降出ていますが、いずれも50%未満と低くなっています。機械備品減価償却率については、耐用年数を経過した備品が存在し、平成29年度では70%後半と高くなっています。このため、今後必要に応じて計画的に更新を行っていく必要があります。1床当たりの有形固定資産額は、類似病院と比較して高くなっていますが、平成25年度の新病院建築により、建築後5年を経過していないため、有形固定資産額が高く計上して影響が出ているためであり、今後減少していくことが予想されます。
全体総括
宇陀地域では、近年内科系開業医の閉院が相次いでおり、地域での医師不足が顕著です。当院においても内科医の減少、高齢化が影響して、地域の医療需要を満たすことが困難となってきており、医療提供体制確保は地域全体の課題となっています。当院は、今後地域包括ケアシステムの中核病院としてその役割を果たすことが求められており、そのためには財務を健全化させることもまた、重要な課題であると考えています。そのようななか、平成26年度に導入した地域包括ケア病棟の導入をきっかけに収支は改善の兆しをみせており、今後入院患者の入院中のリハビリ機能の強化や高齢者の看取りの実施など地域の医療需要に応え、地域の中核病院としての役割と責任を果たすため努力していきます。