経営の健全性・効率性について
経常収支比率については、黒字であり、料金収入や一般会計繰入金等の収益により維持管理費等の費用を賄えているが、一般会計繰入金に大きく依存している状況である。企業債残高対事業規模比率についても、一般会計負担分の割合が大きいことから、類似団体平均値を大きく下回っている。経費回収率については、類似団体平均値よりは高いものの、汚水処理費が使用料金により賄われておらず、適正な使用料金収入の確保及び汚水処理費の削減が必要である。施設利用率については、類似団体平均値とほぼ同等の値となっているが、今後、人口減少等による社情勢の変化に合わせ、処理場のダウンサイジングや統廃合等、施設の効率化に向けた検討を進める必要がある。水洗化率については、100%未満であり、類似団体と比較しても低い値となっているため、公共用水域の水質保全や、使用料金収入確保の観点から、普及啓発等、更なる向上の取り組みが必要である。
老朽化の状況について
現状では法定耐用年数を超えた老朽化管渠がないため、改修のみの実施となっている。資産の老朽化度合を示す有形固定資産減価償却率は類似団体平均値より低い値であるが、26処理区のうち19処理区が供用開始から15年以上経過しており、処理施設の機械・電気設備などの改修や更新時期を迎えているため、長寿命化対策等による施設の健全化や最適な規模での改築更新を計画的に行っていく必要がある。
全体総括
当該事業は現在施工中の山田南地区の完了をもって整備は終了し、以後は既存施設の維持管理に移行していく。最も古い処理区では供用開始から30年以上経過し、施設の改築更新に多額の費用が必要となることに加え、処理区ごとの経理処理となっていることや小規模の処理区があることなど、財政構造や効率性などの面でも課題が多く、今後さらに経営が困難になることが予想される。こうした状況のもと、安定的な事業運営に向けた経営基盤強化と財政マネジメント向上のため、平成31年3月に「伊賀市下水道事業経営戦略」を策定したところであり、今後、この計画に基づき、施設の統廃合による効率化を踏まえた計画的な改築更新や、事業実施に必要な財源を確保するための適正な使用料金への見直し等の取り組みを進めていく。