地域において担っている役割
医療を提供する事業者として、患者との相互信頼関係の構築を最も大切にし、患者に喜ばれる質の高い医療を提供するとともに、この地域の基幹病院として、この地域の医療の水準維持と向上を図る。また、「がん」「脳卒中」「心筋梗塞等の心血管疾患」「糖尿病」「精神疾患」の5疾病について、急性期医療及び高度専門医療を提供し、地域住民が安心して医療を受けられる体制を確保するとともに、患者が住み慣れた地域で暮らせるよう、かかりつけ医や介護サービス事業者等との連携の強化を図り、地域完結型の医療を推進する。これらの取組みを更に充実させるため、健全経営に努めるなど経営基盤の強化を図り、医療サービスを継続し提供していく。また、第二種感染症指定医療機関として、積極的に感染症患者を受け入れるとともに、感染の疑いのある市民が速やかに検査できる体制の充実を図る。
経営の健全性・効率性について
「①経常収支比率」は、100%を超え、「③累積欠損金比率」は、平成26年度の制度改正による退職給付引当金を一括計上したことで一時的に増加したが、その後の黒字により順調に減少してきた。「②医業収支比率」は、他会計からの繰入金による収入を含めて、医業収益によって医業費用が賄えている状況であり、健全な経営基盤を確保し自立性の高い経営が行えている。「④病床利用率」は、類似病院平均値を上回り、80%以上を維持している。「⑦職員給与費対医業収益比率」は、職員の増員などにより給与費が増加したため、前年度から1.0ポイント上昇した。「⑤入院患者1人1日当たり収益」と「⑥外来患者1人1日当たり収益」、「⑧材料費対医療収益比率」は、高額なカテーテルや抗がん剤などの使用により年々増加している。医療材料の償還価格を適切に算定したり、後発医薬品への切替えにより削減を目指す。各指標について、今後は新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、厳しい経営状況が予想されることから、先行きは不透明である。令和元年度の主な取組みとして、事業面では、脳神経内科、脳神経外科の医師が24時間体制で診療にあたる脳卒中ケアユニット(SCU)を開設し、看護体制を強化するとともに、早期のリハビリテーションを実施するなど脳卒中治療のさらなる充実を図った。施設設備面では、多様化する医療需要等に対応するため、令和4年5月の開設を目指して、手術台と血管撮影装置を組み合わせたハイブリッド手術室やアレルギーセンター等を備えた新棟の増築を計画し、基本設計、実施設計に着手した。令和2年度中に工事の着工を予定している。
老朽化の状況について
「①有形固定資産減価償却率」は、年々増加しており、類似病院平均値を上回っている。施設の老朽化が進んでいることが確認でき、当院は建設から20年以上が経過することもあり中長期的な計画を検討する必要がある。「②器械備品減価償却比率」についても、年々増加しており、類似病院平均値を上回っている。患者の生命身体に影響する重要な器械備品について定期的に更新を進める一方で、その他の備品については耐用年数を経過しても使用に耐えられるものは、修繕しながら使用しているためと考えられる。「③1床当たり有形固定資産」は、類似病院平均値を上回っているものの、過去5年の当該病院値に差は生じていない。経常収支比率は100%を上回り、その更新投資を経常収益で賄えているため、健全な経営基盤を確保し自立性の高い経営を行うことができている。今後も、計画的に高度な医療機器の導入や更新を行い、安全・安心で高度な専門的医療の提供に努めていく。
全体総括
各指標のうち、経営の健全性・効率性の「③累積欠損金比率」については累積欠損金が発生していないことが必要であることから早期に解消する必要があるものの、経常収支比率や医業収支比率は100%を上回っており、現状、健全かつ効率的な経営を行うことができている。新公立病院改革プラン(中期経営計画)で定めた取組みを積極的に進め健全な経営を継続するため、医療スタッフの確保や施設・設備の改修、医療機器の更新・導入を行うとともに、地域の医療機関へ継続的に訪問し更なる相互の信頼関係の向上を図る。経営形態については、診療体制の充実を図っていることや、他院との役割を分担し相互に補いながら連携の強化を推進していることなどから、他院との再編やネットワーク化、経営形態の見直しを行うことなく、引続き現在の体制で運営することとする。しかし、今後、病院を取り巻く環境や当院の経営状況等に大きな変化が生じた場合には、改めて検討するものとする。なお、平成27年3月に策定し、平成29年3月に改定した新公立病院改革プランは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、中期的な計画見通しが立たないことから、新棟増築工事が完了する令和4年度まで延長する予定である。