経営の健全性・効率性について
地方公営企業法適用初年度のため、グラフからの経年比較はできませんが、類似団体及び全国平均等を考慮した分析とします。①経常収支比率他会計より企業債元利償還相当額の繰入金があるため100%を超えています。当事業は6処理区で構成しており、供用開始から24年経過した処理区もあり電気・機械類の更新時期を迎えていますが、企業債償還が精一杯で投資財源は確保されていません。健全経営を継続するには、広域化推進総合事業による統合を推進し維持管理費の削減や維持管理適正化計画に基づく更新投資等が必要になります。投資等の財源は国庫補助金や企業債を予定していますが、企業債償還金は営業収益で確保する必要があり、適正な使用料への改定が必要です。②累積欠損金比率他会計繰入金の一部を小規模集合排水処理施設整備事業や個別排水処理施設整備事業へ補填したため、欠損金が生じました。また、人口減少による使用料収入の減少も要因の一つです。他会計繰入金に依存した事業のため欠損金が生じやすい状況にあり、早急に適正な使用料への改定が必要です。③流動比率企業債元金の半分以上の償還を終えましたが、6処理区の企業債償還金が多額にあります。今後は、広域化統合により企業債償還金は特環に移管しますが使用料収入も減少することから改善は見込めません。④企業債残高対事業規模比率6処理区の企業債償還金が多額にあります。今後、広域化統合により特環へ移管されるため、減少する見込みですが広域化統合が困難な処理区の更新投資等は企業債借入を行う予定であり上昇が懸念されます。⑤経費回収率分析表では114.13%ですが決算修正後は100%です。使用料で回収すべき資本費の計上漏れが原因です。今後、修繕費用や更新投資等が必要となるため、減少すると推測します。⑥汚水処理原価分析表では165.83円ですが決算修正後は189.26円です。維持管理費が抑制できたと判断します。しかし、有収水量の減少、維持管理費用の増加傾向により、今後は上昇すると推測します。⑦施設利用率人口減少により低下しています。広域化統合により6処理区を2処理区とする計画ですが、統合が困難な処理区の更新投資等の際に処理水量に見合ったダウンサイジングの検討等を行い適切な施設規模とする必要があります。⑧水洗化率未接続者は高齢者世帯等のため、水洗化率の向上は期待できませんが啓蒙活動により接続推進を図ります。
老朽化の状況について
①有形固定資産減価償却率地方公営企業法適用時に減価償却累計額がリセットされたため、低い水準にあります。今後、広域化統合により減価償却率は上昇すると推測します。②管渠老朽化率法定耐用年数を超えた管渠はありませんが、マンホールポンプは耐用年数を経過した処理区もあり、マンホールポンプ更新や長寿命化対策が必要です。そのため、マンホールポンプの遠方監視等の機能強化を検討します。③管渠改善率更新した管渠はありませんが、雨天時の処理水量が増加ため、不明水の浸入対策が必要です。今後は、維持管理適正化計画等を策定し、マンホールポンプの更新や管渠修繕、更生工事の改善が必要です。
全体総括
本町下水道事業は、特定環境保全公共下水道事業、農業集落排水事業、小規模集合排水処理施設整備事業、個別排水処理施設整備事業の4つの事業からなります。令和2年度に地方公営企業法の財務適用等を適用して、4つの事業を1つの会計で運営しています。少子高齢化による人口減少が予測されることから、下水道広域化推進総合事業により農業集落排水事業を特定環境保全公共下水道事業へ統合し、維持管理費の削減や処理場更新費用の抑制を図っています。今年度、農業集落排水事業2地区を特環へ接続し、令和3年4月1日付で統合しました。しかし、地理的要因等により広域化が困難な地区や事業があり、下水道事業会計の中で維持管理費や更新費用の財源を確保する必要があります。今後は、平成20年度に作成した生活排水処理区統廃合基本計画を見直し、維持管理適正化計画を策定し、持続可能な下水道事業の運営と更新投資等の平準化を図っていきます。