地域において担っている役割
当地域は、高齢化の進展により、一人暮らしや高齢者のみの世帯が増加する中、医療・介護の資源が不足し、その受け皿として公的医療機関である当病院が担ってきた経緯がある。また、地域の中核病院として急性期から慢性期まで幅広い医療を提供するとともに、地域で唯一の産科医療を有し、安心できる子育て環境に大きく寄与してきた。療養病棟を整備したことで、長期にわたる療養支援を行っており、在宅サービスでは訪問看護や訪問リハビリテーションの提供体制を有している。併設する老人保健施設と連携し、地域包括ケアシステムの一員として、地域の高齢者の生活を支えている。
経営の健全性・効率性について
平成23年度以降、有利な施設基準を取得するための経営戦略として職員数を増員してきたが、恒常的な医師不足により患者数が伸びず職員増に見合う収益確保には至らなかったことが、赤字運営が継続してきた大きな要因となっている。加えて、平成29年度決算では、入院収益が目標に達せず退職給与費が増加したことなどにより資金収支がさらに悪化したことから、資金不足を補うための一時借入金が増加し、資金不足比率が経営健全化基準を超える事態となった。そのため、平成30年度において経営健全化計画を策定し、優位な診療報酬の確保や職員給与の抑制など、計画の着実な取り組みを進めたことにより、③累積欠損金の削減が図られた。
老朽化の状況について
当病院は昭和46年建築の西棟、平成6年建築の東棟に加え、東日本大震災を教訓として平成27年に整備した南棟(被災患者受入施設)により構成される。南棟建設により一部施設・設備の老朽化は改善したが、療養病棟が入る西棟は建設から48年、急性期病棟・地域包括ケア病棟が入る東棟は25年が経過し、全体的には配管や設備の老朽化が進んでいる。しかしながら、厳しい経営状況にあることから、施設の維持管理や器械備品の更新に関しては、当面の間、必要最小限に止め、緊急性・必要性の高いものに優先順位を付けて行う。債務等の返済が落ち着く令和7年度を目標に、経営状況や医療需要等を考慮しながら、施設の建替え等を含めた総合的な検討を進め、今後の方向性を定めたい。
全体総括
安定的な収益確保の要である医師確保が進まない状況下であったにもかかわらず、他の医療スタッフ採用を先行し、その後の適正配置への対応が遅れたことが、⑦職員給与費対医業収益比率を押し上げてきた一因となってきた。そのため、平成30年7月に許可病床数を278床から199床に見直して入院、外来収益の増収に努めるとともに、職員給与費の抑制や委託料・材料費など支出の削減に取り組んだことにより、各指標において経営状況の改善が見られた。職員一丸となって収益確保とコスト削減意識を共有し、組織全体で効率的な病院経営への取り組みを進めるとともに、経営健全化計画を着実に実行することにより、さらなる経営改善につなげたい。