経営の健全性・効率性について
収益的収支比率が62%程度であることから、経営にかかる費用のすべてを下水道使用料で賄うことができず、一般会計からの繰入金を充てて経営を行っている。企業債残高対事業規模比率が平成27年度に上昇しているのは、新たな企業債の発行が要因として挙げられるが同年度に面整備が完了したことから、今後は減少傾向が続く見込みである。経費回収率は97%程度であることから、汚水処理費や施設の維持管理費は使用料である程度賄うことができていると考える。汚水処理原価は施設の老朽化に伴う維持管理費の増加によって上昇傾向にある。類似団体に比べて低めに推移してきたが、平成28年度以降同程度の水準となっている。施設利用率は左記の数値に誤りがあり、平成28年度末時点で36.34%である。また、過去の数値においても誤計上があり、実際は33%から36%程度で推移している。接続世帯の増加に伴い徐々に改善されつつあり、農集区域の統合により平成29年度には類似団体よりも高い水準となった。水洗化率は面整備を完了したことで高水準に達している。未接続の世帯についても引き続き接続促進を図っていく。収益的収支比率が低く、必ずしも健全な経営とは言えないが、経費回収率は類似団体に比べて良好な数値となっており、水洗化率も高い水準であることから、下水道事業という社会インフラ事業としては、ほぼ適正な状況にあると考える。
老朽化の状況について
市が所有する処理場である大和クリーンセンターは、平成5年の供用開始から20年以上を経過している。施設の老朽化に対応するため、平成27年度から平成30年度までを計画期間として長寿命化及び耐震化工事を実施しているが、長期的には流域下水道への統合も検討していく。管渠については、入替や更生はほとんど行っていないが、ストックマネジメント計画を平成28年度に策定し、平成29年度から老朽化したマンホール蓋の更新を実施している。
全体総括
現状では、料金収入により施設の維持管理経費はほぼ回収できているが、企業債償還に係る経費までは回収できていない状況である。農集区域の統廃合による効率化によって、一定の経営改善効果が見込まれるが、水洗化率は高水準に達しており、今後の大幅な改善は見込めない状況である。下水道事業は市民生活の根幹にかかわる社会インフラであり高額な投資を要するが、料金面では市民生活への影響が大きいことから値上げは困難であり、収益的収支比率を100%以上にすることは非常に困難な状況にある。平成31年度に公会計に移行することから、持続的な下水道サービスを提供していくため、コスト意識を更に向上させ、財政基盤を強化していくことが課題となる。