経営の健全性・効率性について
①経常収支比率:全国平均及び類似団体と比較して高い113.46%となった。単年度の収支が黒字であることを示す100%以上となってはいるものの,経常収益は使用料では賄えておらず,一般会計からの繰入金に依存している状況である。浄化槽設置基数の増加により収入は増加するが,維持管理費の支出も増加するため,今後も維持管理費の削減に努めていく必要がある。③流動比率:全国平均及び類似団体と比較して高い540.4%となった。高い要因は,平成24年度開始事業のため元金返済据置の影響があり償還額が抑えられているためである。償還額は,令和9年度まで増加傾向であり,数値は低く推移していくと思われる。⑤経費回収率:全国平均及び類似団体と比較して低い50.67%となった。使用料で回収するべき汚水処理費を使用料で賄えてない現状であり,今後は使用料水準を評価しながら経営改善を図っていく。⑥汚水処理原価:全国平均及び類似団体と比較して高い322.04円となった。今後は維持管理費の削減に努め,効率的な汚水処理を行っていく必要がある。⑦施設利用率:全国平均及び類似団体と比較して低い52.08%となった。浄化槽設置基数は増加し処理能力は増大するが,節水意識の向上や人口減により処理水量が減少するため施設利用率は,緩やかな減少傾向が予想される。
老朽化の状況について
①有形固定資産減価償却率:全国平均及び類似団体と比較して著しく低い3.33%となった。要因としては,平成24年度から開始した事業であり資産となる浄化槽については,法定耐用年数に近い資産が少ないことが考えられ,数値については低い値を示しており,良好な状態と見える。一方で,将来的には必然的に法定耐用年数が到来し,更新・改良が必要となることから,長期的な展望を持った長寿命化計画の策定や,実効性のある更新計画の策定が必要となってくる。
全体総括
経常収支比率が113.46%となり,経営の健全性という観点からは数値上良好な状況となっている。しかしながら,法適用企業となり独立採算を求められる中においては,法適化以前同様,一般会計からの繰入金に依存している現状は必ずしも良好な経営とは言えない状況である。独立採算の観点から長期の収支を検討するに当たり,浄化槽の耐用年数経過後の大量更新が使用料収入のみでは困難と思われる。公共浄化槽の新規設置を縮小しながら,個人に補助金を交付して浄化槽を設置する方式も併用し,今後の事業運営を検討する必要がある。