地域において担っている役割
対馬医療圏の中核病院として救急・小児・周産期・精神・災害医療を提供するほか、24時間体制の島民医療の確保、心臓カテーテル治療や脳梗塞血栓溶解療法、がん診療の向上、外科・整形外科手術の充実、小児周産期医療・精神科医療の維持など地域完結型医療の提供に努めている。また、対馬地域における地域包括ケアシステム充実のため、訪問看護や在宅医療、地域リハビリテーション、認知症対策を推進する。
経営の健全性・効率性について
昨年に引き続き入院収益、外来収益ともに最高益を記録した。入院収益は県内DPC標準病院群において機能評価係数Ⅱが県内1位であることと併せて、令和元年末からの「効率の良い病床運営」への病院全体での取り組みにより、病床コントロールを効率よく行えたことが、コロナ禍にあっても収益の維持が可能となったと思われる。入院患者、外来患者1人1日当たり収益は増収傾向にあるものの平均値を下回っており、さらなる増収対策が必要である。職員給与費、材料費対医業収益率はともに平均値を大きく上回っており、適正な人員配置と、経費削減対策が必要である。
老朽化の状況について
当院は平成27年に開院し5年が経過した。有形固定資産減価償却率は平均を下回っているが年々微増となっている。今後10年目、15年目となると建物、設備も老朽化が進んでくるものと思われるため、効果的な改修計画が必要となる。器械備品減価償却率はわずかではあるが平均値を上回っており、計画的な更新が必要な時期に入ったものと思われる。1床当たり有形固定資産は開院後初めて平均値を下回った。全国的にコロナ関連補助金を活用した設備投資が増加したためと思われるが、当院の数値は依然高い状況にあり、適正かつ計画的な設備改修、機器の更新が必要である。
全体総括
令和2年度はコロナ禍において厳しい経営を余儀なくされた病院が多く見られたが、当院においては入院、外来収益ともに増収となった。近県の福岡県に緊急事態宣言、まん延防止等重点措置が適用されたこともあり、島外受診から島内受診へ移行した患者が増加したものと思われる。このことを一過性のものしないためにも、地域完結型医療を可能とする魅力ある病院づくりが必要である。また、長崎県の離島地域は、過疎化、高齢化が進み、地域の活力低下や人材不足が大きな問題となっている。対馬医療圏においても人材不足は深刻であり、基幹病院を中心とした人材派遣や情報ネットワークの構築、限られた資源を有効に活用する地域医療、地域包括ケアを推進する。