経営の健全性・効率性について
本市下水道事業は,令和2年度から公営企業会計に移行したため,各項目の数値については令和2年度分のみとなっている。経常収支比率は99.74%で赤字経営となっており,使用料収入や一般会計からの繰入金の適正化が必要である。累積欠損金比率は類似団体平均を上回っており,使用料収入の確保や維持管理費のコスト縮減などにより改善を図っていく必要がある。流動比率は類似団体平均を下回っており,流動負債の建設改良費に充てられた企業債の比率が多いことが要因として考えられ,今後支払い能力を高めていくための経営改善をしていく必要がある。企業債残高対事業規模比率は類似団体平均を上回っている。これは本市が平成18年度に供用を開始,現在は整備面積を拡大している状況にあり,使用料収入に比べ企業債残高の規模が大きくなっているためである。今後は,初期に投資した終末処理場や排水ポンプ場に係る企業債の償還がピークを迎えているため減少が見込まれる。汚水処理に係る経費回収率は,類似団体平均を下回っている。汚水処理に係る費用に対し,一部使用料収入以外の収入で賄われていることから,適正な使用料収入の確保と汚水処理費の削減に取り組む必要がある。施設利用率は,類似団体平均を上回っており適正規模の施設整備といえる。水洗化率は,類似団体平均を上回っているものの,使用料収入の確保を図るため,さらなる有収水量の向上に努める必要がある。
老朽化の状況について
法適用に伴い,令和2年度から資産の減価償却を開始したため,経理上の減価償却累計額が少なく,有形固定資産減価償却率は類似団体,全国平均と比較して低くなっている。本市は平成元年度に事業着手し,平成18年度から供用開始を行っている。そのため管渠老朽化率及び管渠改善率は0%となっており,現在は管渠・施設などにおいて耐用年数を経過した資産が無い状況ではあるものの,機械電気設備などにおいては一部耐用年数を超える資産が出始めている。適切な修繕による施設・設備の長寿命化に取り組むとともに,計画的かつ効率的な維持修繕・改築更新に努める。
全体総括
平成18年度から供用開始し,下水道整備区域の拡大を図っているため,企業債残高が多くなっている。また,経常収支比率及び汚水処理の経費回収率が100%を下回っていることから,さらなる水洗化率向上による有収水量の増加と,使用料収入の確保,維持管理費用の縮減に取り組む必要がある。さらに,企業債残高対事業規模比率が類似団体平均を上回っていることから,供用開始から間もなく整備区域拡大に取り組んでいることや地理的要因等により建設費の増加により企業債残高の増となっているため,建設コストの縮減に取り組む必要がある。下水道事業の整備計画を見直したことから,事業進捗の適正化を図るとともに,令和2年度からの法適用開始により経営状況が今まで以上に明確になったことも踏まえ,より一層の経費削減や使用料の適正化など経営の健全化に努める。