経営の健全性・効率性について
特定環境保全公共下水道事業においては、供用開始区域の拡大に伴い新規接続が増え、使用料収入も徐々に増加の傾向にある。しかし、新規接続はおおむね目標どおりであったものの、予想以上の人口減少や節水型機器の普及等により計画値程の使用料収入は得られず、『第2次中期経営計画(平成23年度~平成28年度)』に対して著しく乖離している状況である。経費回収率については年々良化しており、平成27年度は前年度より3.04%上昇し43.27%となったが、平均値49.22%には僅かに及ばない。汚水処理原価についても365.39円/㎥で、前年度より良化しているが、それでも使用料単価158.10円/㎥に対して約2.3倍のコストが掛かっており、この差が使用料収入の不足となっている。汚水処理原価のうち維持管理費分は151.91円/㎥であることから、維持管理費については使用料収入によって賄えているといえる。しかし、資本費分である213.48円/㎥を賄うには到底及ばないことから、料金不足の背景には地理的要因による多大な投資額があることは明らかである。こういった現状を把握した上で、使用料収入の確保による経営基盤の強化と既存施設の有効利用、並びに人口規模に応じた施設のダウンサイジング等を図って維持管理経費削減を行うことにより、今後の経営戦略において、使用料単価と汚水処理原価との差の縮小により自主財源率を高め、持続可能な下水道事業を構築する必要がある。
老朽化の状況について
平成3年度から建設事業を開始しているため、管渠等の老朽化は未だ見受けられないものの、本格的な人口減少社会の到来による使用料収入の減少が予測され、将来的な投資余力は減退の方向にある。今後の対策としては、老朽化施設の改築更新工事等のストックマネジメント手法の導入・実践により、個々の施設ではなく施設全体を計画的に最適化することにより効率的な施設維持管理と長寿命化を図り、既存施設の有効利用に努める。
全体総括
持続可能な下水道事業を構築するためには、未整備区域解消による更なる加入率の向上と使用料水準の見直しによる経営基盤の強化、施設維持管理の効率化による有効利用が必要である。①未整備区域解消:アクションプランに基づく10年概成を目指し、国の補助事業採択による財源確保を行う。②使用料水準の見直し:消費税増税といった市民負担の増加に加え、未整備区域があり接続率も低い現状を考慮すると、使用料金の値上げは非常に困難である。しかし、自主財源を確保するためには避けては通れない問題であることから、次の『経営戦略(平成29年度~平成38年度)』策定における重要な検討課題である。③施設維持管理の効率化:『下水道事業統廃合基本計画』に基づき、平成28年度より処理区の統廃合を開始。また、ストックマネジメント手法による長寿命化対策を行うことにより、効率的な維持管理を目指す。