地域において担っている役割
一年を通して新型コロナウイルス感染症への対応に追われる中、必要な医療を提供できるよう、感染対策を徹底し、名古屋市立大学病院との連携により充実した診療体制を幹として急性期の診療を実施しています。陽性者の入院受入れや感染の疑われる方へのPCR検査などを市内、市外を問わずに受入れを行っています。また市内唯一の二次医療機関として、市内の救急搬送の約90%を受け入れ、急性期医療を提供する一方で、近隣市町からの患者も受入れをしています。高齢化が進み、糖尿病の罹患率も高いという当市の医療課題に対応するとともに、大学と遜色ない高度な医療を提供する役割も期待されています。
経営の健全性・効率性について
①経常収支比率は、医業収益の減収を医業外収益の国県補助金で補填することができたため、横這いとなりました。②医業収支比率は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、入院患者数が前年度対比87.1%、手術件数が86.6%減少したこと、外来患者数も89.4%減少したことによる入院・外来収益の減が影響し低下しました。③累積欠損金比率は、開院当時からの未処理欠損金が大きくなっており、平均値より高くなっています。④病床利用率は、高度な医療が提供できる体制づくり、地域連携の強化による経営改善の取り組みを継続したことで70%を維持したものの、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、前年度から10.4%減少しました。⑤入院患者1人1日当たり収益は、手術内容の高度化等により、全国平均を下回っているものの、前年度より改善しました。⑥外来患者1人1日当たり収益は、検査や外来での手術件数の増加、高額薬品を用いる化学療法を必要とする患者増加により外来単価が増加しています。⑦職員給与費対医業収益比率は、医師数の増加に伴い給与費が増加したことに加え、医業収益の減少により比率が低下しました。⑧材料費対医業収益比率は、新型コロナウイルス感染症の影響による医療材料の価格高騰が顕著でしたが、引き続きコンサルタント業者によるベンチマークを活用しながら、薬品費や診療材料費の価格交渉を継続します。
老朽化の状況について
①有形固定資産減価償却率について、蒲郡市民病院は平成9年10月に現在地へ移転し22年を経過しており、病院建物本体の減価償却は令和20年度まで続くため平均値を上回っているが、器械備品は計画的に更新しています。②器械備品減価償却率について、市民病院には大小さまざまな医療機器があり、検査や手術で使用するような高額な医療機器については、財政状況などを考慮しながら計画的に更新しています。近年は放射線機器の更新増設や手術支援ロボットの導入も行い、高度な医療の提供を促進しました。また、電子カルテシステムの更新を機にICT化に向けた診療体制づくりも推進しています。地域の急性期医療を担う二次医療機関として、これからも安心して受診していただけるよう医療機器を整備していきます。
全体総括
平成29年3月に策定した蒲郡市民病院新改革プランに基づき、令和2年度までに33項目の具体的な取り組みを実践し、平成30年度に病床利用率は70%以上、令和元年度には目標年度より1年早く黒字化を達成しました。令和2年度も、新型コロナウイルス感染症の影響下において黒字決算となりました。具体的な取り組みの1つである人間ドック事業は平成30年4月から開始し、実施日や対象を拡充すると共に、特定保健指導の初回指導への対応など検査後のフォローアップを提供しています。今後は、検査項目の充実を図りながら、市の健康行政への取組についてもさらに協調していきます。再編・ネットワーク化については、平成30年度からの名古屋市立大学と寄附講座の開設により、大学と遜色のない医療の提供を目標として、地域の医療課題の臨床面での研究をすすめるとともに、医師や看護師の育成についても研究を重ねています。開業医と当院、名古屋市立大学病院で連携強化を図りながら、総合病院としての役割を果たすとともに、他大学とも引き続き連携を密にし、経営改善を推進します。なお、令和3年度以降は既存の改革プランの流れを汲んだ院内経営目標を掲げ、経営改善を推進し、令和5年度に新公立病院改革プランの策定を予定しています。