経営の健全性・効率性について
類似団体と比較して経常収支比率及び経費回収率ともに平均を下回っている。累積欠損金比率についは類似団体平均を下回ってはいるが、累積欠損金自体は発生してしまっている。また汚水処理原価は類似団体平均よりも420.48円上回っている。これらの状況から経営の状況は健全とは言えない状況であり、同じ公共下水道事業会計で運営している特定環境保全公共下水道事業の黒字や一般会計からの補助金に依存して経営が維持されていることが分かる。債務の状況について、流動率は49.72%と100%を大きく下回っているが流動負債の大半は建設改良に充てる企業債であり、企業債の借入に際しては元利償還に対して有利な交付税措置を受けられる過疎対策事業費債を最大限活用しており、一概に支払い能力が不足しているとは考えていない。建設当時に借入した企業債の残高は減少傾向にあったが、令和4年度から老朽化した設備の更新事業を実施している影響もあり、企業債残高対事業規模比率について類似団体平均値を大きく上回っており、企業債の借入残高は当分の間、現状の水準で推移する見込みである。施設利用率は類似団体平均値よりも11.83%下回り、水洗化率も類似団体平均値より14.1%下回っていることから、処理能力に対し使用者が少ない状況となっている。しかし漁業集落ではコロナ禍が落ち着いてから水産加工業に従事する外国人実習生が戻ってきており、実習生向けの集合住宅の新規建設などで、人口減少の影響は緩やかとなっている。
老朽化の状況について
漁業集落排水施設は平成13年度~17年度の供用開始のため老朽化が進んでおり、有形固定資産減価償却率は類似団体平均を16.72%上回っているが、令和4年度から施設の延命化を目的として、ストックマネジメント計画に基づく計画的な施設更新を実施している。管渠についても平成13年~17年度の供用開始であり、一般的な下水管渠の耐用年数である50年を超過したものはなく、これまで更新を実施していないことから管渠老朽化率及び管渠改善率は共に0.00%となっているが、今後は重要管路の耐震化に向けた計画策定について検討していく予定である。
全体総括
類似団体平均値と比較すると経費回収率及び汚水処理原価の改善に向けた対策が必要であり、老朽化した施設の更新事業を実施しているため企業債残高の減少も見込めないなど、経営が健全とは言えない状況である。効率性に関しては類似団体平均値よりも施設利用率及び水洗化率ともに低く、処理能力に余剰がある状況であるが、老朽化した施設については計画的に更新する必要があり、今後の施設の稼働見込と施設更新のバランスを検討する必要がある。全体的に経営は厳しい状況であるが、漁集排水事業は町の基幹産業である水産業の基盤であるサロマ湖の環境保全のため導入されており、今後も継続していく必要があるため、令和7年度中に実施予定の経営戦略の改定などを通じて、今後も経営の改善に努めていく。