経営の健全性・効率性について
本市の農業集落排水事業は、単独処理場を2箇所有し、多額の維持管理費用が発生しています。本市では、ほかに公共下水道事業、特定環境保全公共下水道事業も実施していますが、3事業とも同一の料金体系としています。平成27年度から地方公営企業会計に移行し6回目の決算となった今回は、経常収益が経常費用を上回ったため、①経常収支比率が100%を超え、単年度収支が初の黒字となりました。⑤経費回収率については前年度比5.67%向上したものの、100%未満で汚水処理費用を使用料収入で賄えていない状況であり、依然として一般会計からの繰入金に依存した経営となっています。営業収益に対する累積欠損金の状況を表す②累積欠損金比率は前年度の469.61%から64.98%向上し、404.63%となりました。これらの経営指標が向上した主な要因は令和元年9月分からの下水道使用料の値上げにより営業収益が増加したことによるものです。累積欠損金を解消するためには、当年度の欠損金を減らす若しくは発生させない必要があり、建設費や維持管理費について、効率的、計画的に取り組むことによってコストを抑制していきます。④企業債残高対事業規模比率は、企業債残高の減により170.20%の減となっているものの類似団体平均値より高い状況です。
老朽化の状況について
本事業については、平成12年の供用開始から20年が経過しています。公共下水道事業及び特定環境保全公共下水道事業に比べ設置年度は新しいですが、処理場及びポンプ場の設備更新を実施しています。農業集落排水事業機能診断調査及び農業集落排水事業最適整備構想に基づき、補助事業採択の前提条件となる事業計画を令和3年度中に定めて、更新の優先度が高いと判定されているマンホールポンプ場及び処理場の改築・更新に着手していきます。また老朽化対策と合わせて耐震化も進めていく必要があります。
全体総括
本事業については、処理区域人口が少ない農村部を対象としているため、汚水処理原価が高くなる傾向があります。そのうえ、下水道使用料は全国平均に比べ安価に設定されています。事業費に見合った使用料収入の確保のため令和元年9月分から使用料値上げを行いました。安定した下水道事業サービスの持続と施設の老朽化へ対応するためには使用料値上げは不可避であり、令和5年度にも値上げを行う予定です。さらに、経営の合理化を図るため、2箇所ある処理場のうち、1箇所を廃止し特定環境保全公共下水道に取り込む広域化を行う予定です。本市は今後数年は人口増が見込まれますが、いずれ人口が減少していくことが予想されるため将来を見据えた経営が必要と考えています。持続可能な下水道事業経営のため、「下水道事業経営戦略」に基づき、経営基盤の強化と財政マネジメントの向上を目指します。