地域において担っている役割
周防大島町立大島病院は周防大島町西部地域の地域医療を担い、救急患者等の時間外患者受け入れの役割も果たしている。病床は一般病棟39床と療養病棟60床を有し、一部の急性期から慢性期の患者の入院加療を行っている。他医療機関等の協力により特殊診療科の診療も行い、一定水準の医療を地域住民へ提供している。平成29年12月透析部門の周防大島町立東和病院との統合を当院へ集約する形で行い、合理化を図った。
経営の健全性・効率性について
経常収支比率・医業収支比率とも、平成29年度は前年度から減少し類似病院平均値を下回った。これは職員数増加等による給与費増加等支出の増加と、それに比例して収益が伸びなかったことが要因であると考える。累積欠損金比率は平成28年度で積立金が枯渇したため平成29年度においては赤字を補填する財源が無く、欠損金が発生したもの。外来患者1人1日当たり収益については当院では院内処方を行っているため、類似病院と比較し高い水準になるものと考える。職員給与費対医業収益比率は類似病院平均を下回るものの、平成29年度は職員数増加等による給与費増加で上昇している。材料費対医業収益比率は療養病棟が包括算定となるため平均値を上回るものと考えられる。
老朽化の状況について
平成22年度に病院を新築したため有形固定資産減価償却率は平均値を大きく下回っている。しかしその際更新整備した機器の減価償却が進展してきており、機械備品減価償却率は上昇傾向にある。施設整備については経営状況に鑑みて抑制する方針であり、現在保有する機械備品については保守点検を十分に行い、安全性を確保しつつ耐用年数を超えて使用することとしているため、今後は老朽化が進んで行くことが考えられる。1床当たり有形固定資産は地域住民へ一定水準の医療を提供するためMRI等の高額な医療機器を整備しているほか、人工透析に要する機器整備も行っていることから、平均値を上回っていると考える。今後の機械備品整備については地域の医療需給情報等の分析を行うなどし、過大な投資とならないよう留意する。
全体総括
周防大島町立大島病院は東西に広い周防大島町の西部地区において地域医療の確保に欠かすこのとできない病院である。近年は周防大島町の人口が徐々に減少していく状況の中、外来収益は患者数の減少に伴い下降しているが、入院収益は一般病棟入院基本料13対1から10対1への類上げ、眼科手術等により増加し、全体としては増加してきている。しかし一方で給与費の増加等による支出の増加額が収益の増加額を上回っており、経営状況は悪化してきている。今後は療養病棟一部病床の地域包括ケア病床への転換、療養病棟入院基本料2から、より単価の高い療養病棟入院基本料1への類上げ等により1人1日当たり収益を上昇させ、収益の増加を図る。また、周辺の医療機関、施設等との連携を強化し外来患者の確保、病床利用率の向上を目指す。