経営の状況について
経営の状況については、仁多発電所大規模改築工事のため運転を停止した平成26年度において営業収支比率が一時的に100%未満となったが、それ以外の年度においては収益的収支比率、営業収支比率、EBITDAについて概ね良好である。特に仁多発電所大規模改修を終えた平成27年8月からは、FIT制度の認定単価による売電により収入が増額し、安定した経営が引き続き見込める状況にある。供給原価については、平成26年度より増加傾向にあるが、これは平成26年度から行った仁多発電所の改築をはじめ、三沢発電所、阿井発電所の改築に要した借入金の償還が始まったためである。各施設の償還計画から本年度以降減少する見込みである。
経営のリスクについて
設備利用率については、仁多発電所の使用水量と河川流量の関係から、ほぼ常時稼働の発電所のため高い設備利用率となっているが、平成26年の夏から平成27年の夏まで大規模改修により運転を停止したため、平成26年度及び平成27年度においては平年より低い利用率となった。仁多発電所については、平成28年度以降通年稼働となったため、今後は高い設備利用率で推移すると見込まれる。また、三沢発電所の改築及び阿井発電所の新築により両施設が稼働することで、水力発電施設全体(3施設合計)の設備利用率は低下した(三沢発電所においては、改築により使用水量と河川流量の関係から設備利用率は約7割程度の予定)が、いずれも計画値での運転であるため経営リスクに繋がる案件ではなく、大規模な渇水が発生しなければ計画値での安定した運転が見込まれる。また、改築を終えた仁多発電所において電力会社の運用変更に伴う計量機等交換が発生し、修繕費としての支出があった。保有する全ての発電所がFIT認定を受けており、全ての発電所の改築後(平成29年度以降)においては、FIT収入割合が100%となる。このため、FIT適用期間においては安定した収入が見込めるものの、FIT適用終了後(R17~)収入が大きく変動するリスクを抱えている。企業債の借入れにより大規模改築を行ったため、企業債残高対料金収入比率は平均値より大きく高い傾向にある。しかし、平成29年度の借入れをもって資金の借入れが完了し返済を開始していること、いずれもFIT制度による固定価格買取期間において企業債を完済する収支計画を立てていることから、渇水による発電量の大幅な減少が発生しなければ経年とともに数値は低下すると見込まれる。
全体総括
水力発電事業については改築に多額の企業債借入を行っているが、いずれの発電所もFIT認定を受けているため、FIT期間中の借入金完済及び修繕積立を行いながら、安定した経営が見込める状況にある。また、発電所の使用水量と河川流量の関係から、総じて高い設備利用率を維持できる見込みであり、大規模な渇水が複数年度において発生しなければ、収支計画に沿った安定した経営が維持できると思われる。FIT期間終了後においては、FIT前の売電単価で売電できれば営業費用は賄える試算をしており、主要機器の修繕については、FIT期間中の修繕積立において対応することで、引き続き安定経営を行うことを見込んでいる。また、R2年度に作成した経営戦略の中では、中長期的な計画を立てており、FIT終了後でも経営可能な運営ができるような計画としている。