経営の健全性・効率性について
令和2年度は、収益収支比率は全国平均を上回ったものの、経常収支比率については企業債利子償還にかかる一般会計からの繰入金と人件費の減少、冬場の低温にかかる一時的な使用料の増加が主な要因となっており、今後引き続き安定した経営を続けていくために営業収益の増加を図ることが不可欠である。冬期の一時的な使用量の増加と経常費用の減少により給水原価が減少に転じたため、料金回収率も上昇したが、同時に有収率は5%近く低下しており、今後も人口減少に伴う水需要の低下は避けられないこと、施設の老朽化にかかる設備更新や維持管理費の上昇が見込まれることから、長期的な修繕計画と適正な使用料の設定が急務となっている。施設利用率については、近年ほぼ横ばいの状況であり、天候等の不確定要素はあるものの、総体的には水需要の低下による数値の低下が懸念されるため、利用状況を踏まえながら今後施設のダウンサイジング等を検討しつつ、漏水の縮減を図るために管路更新のあり方について検討を進める必要がある。
老朽化の状況について
無収水量の縮減を図るためには老朽管の計画的な更新が必要となるが、事業に莫大な費用を要するため、財源の問題と経営的観点から依然として事業化しにくい状況にある。今後見込まれる施設更新は、給水収益の増加を伴わないことを踏まえ、老朽化対策についての先進事例や他の事業体の状況等の情報収集を行いながら、実現可能な料金の設定、企業債償還額の平準化を図るよう長期計画の策定、アセットマネジメントの見直しを行う必要がある。
全体総括
近年の大型事業の実施により企業債の償還額も当面高止まりする見込みであり、一方、気候要因を除いては給水収益は減少の一途を辿ることが確実である。地方公営企業として今後も安定的な運営を続けていくため、引き続き維持管理のスリム化と経営状況に見合う設備更新を図っていく必要はあるが、更なる経常費用の削減は難しい状況にあるため、料金改定による収益の改善について本格的に取り組んでいく必要がある。