経営の健全性・効率性について
過去5年間においては、①経常収支比率は100%以上を維持し、令和元年度は類似団体平均を上回っており、②累積欠損はなく、③流動比率は類似団体平均より高い状態が続いている。これは、⑤料金回収率が高く、⑥給水原価を抑制することで収益性を維持し、⑦施設利用率を比較的高い水準を維持していることによるものと考えられる。⑤料金回収率は、平成28年度までは100%を下回る状況が続いていたが、平成29年度の料金改定により改善し、類似団体平均より高い比率になっている。平成26年度からの、大規模な老朽管更新のための企業債の発行により、④企業債残高対給水収益比率が上昇し、類似団体の平均を上回る状況が続いているが、平成29年度以降は新たな企業債の発行をしていないため下降に転じている。今後も自己資金とのバランスを考慮し、適正な資金の管理に努める必要があると考える。⑧契約率が47.00%と類似団体平均よりかなり低い割合になっている。しかしながら、現在取水施設2施設のうち1施設を休止しており、配水量も配水能力の1/2となっている現状を勘案すると、概ね良好な数値であると考えられる。とはいえ、契約水量が徐々に減少しているため、現状の契約水量を維持するよう努める必要がある。
老朽化の状況について
本町の工業用水道事業においては、平成26年度から28年度にかけて、下水道工事にあわせて送配水管の大部分の入替工事を行ったこと、また送水ポンプ等の設備の更新工事を行ったことにより、償却対象資産の老朽化の度合いを示す①有形固定資産減価償却率は類似団体平均よりも低い水準を維持している。また、上記の工事により②法定耐用年数を超えた管路はないため、③管路の更新は行っていない。今後は資産の状況を正確に把握し、適切な時期に、適切な更新を行うことにより、安定したサービスの供給に努める必要がある。
全体総括
本町の工業用水道事業は、「1.経営の健全性・効率性」では類似団体平均と比べ概ね良好な経営状況にあるといえる。また、「2.老朽化の状況」では、施設の老朽化率は低く適切な更新工事が行えているといえる。しかし、水需要がこれまでの増加傾向から横ばいもしくは減少に転じることも懸念される一方で、企業債の償還額が当面増加していく中、コスト削減などの適切な措置をとることで、次の管路や施設更新にかかる財源を確保し、安定した事業運営を継続するよう努める必要がある。