経営の健全性・効率性について
①経常収支比率はいずれの年度も100%を超えており、単年度黒字を継続できている。平成28年4月及び令和2年4月からの料金改定(値上げ)により値は上昇している。令和2年度は、料金改定に加えて、コロナ禍の影響による有収水量の増加に伴い、給水収益が増えたことから、前年度と比べ値は増加した。②累積欠損は発生していない。③流動比率は、169.87%と200%を下回っているが、建設改良費未払金の増加によるものであり、資金としては十分確保できている。④企業債残高対給水収益比率は、これまで外部資金に頼りすぎることなく施設整備を進めてきたことにより、類似団体平均値(以下「平均値」という。)よりも低い水準を維持してきた。しかしながら、近年は施設の再構築や更新・耐震化を進めているため企業債への依存が大きくなってきており、企業債残高は上昇傾向にある。⑤料金回収率は、平成28年4月及び令和2年4月からの料金改定によって給水収益が増加したことなどにより、100%を上回っている。⑥給水原価は平均値を下回っている。地形を活かした自然流下による配水の推進や給水原価が安い自己水を最大限に活用するなどの効率的な水運用が一定の効果を上げているものと考えられる。また、令和2年度は、コロナ禍の影響により前年度と比べて有収水量が増加(1.7ポイント)したことから、数値は下がっている。⑦施設利用率は例年、平均値よりも高い水準を維持している。適切な施設規模を確保したうえで、効率的に施設を活用できている。⑧有収率は概ね例年通りであった。本市では、昭和51年度より漏水防止対策に取組んでおり、平均値を大きく上回る水準を維持できている。
老朽化の状況について
①有形固定資産減価償却率は平均値の推移と同様に微増の傾向にあり、老朽化した施設が年々増加している状況である。長寿命化を図りつつ、調査・点検、評価・診断のもと、本市独自の更新基準により効率的な施設更新を進めている。②管路経年化率は、平均値よりも著しく高い。本市の水道は歴史が古く、特に1960年から70年代にかけて、高度経済成長期の象徴とされる万博の開催とともに、千里ニュータウンの開発が行われた。まちの発展の過程で建設された大量の水道管が法定耐用年数の40年を超えたことにより、管路経年化率が高くなっている。③管路更新率は、平成25年度から積極的に更新事業に取り組み、平均値よりも高い水準を維持できており、令和2年度は令和元年度と同様に、平均値と比較して約2倍の値となっている。
全体総括
経営戦略の初年度となる令和2年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響はあるものの、おおむね見込みどおりの状況となった。経営面について、施設を有効に利用し(1.⑦)、維持管理に努めることで高い有収率を保っており(1.⑧)、給水原価は平均値よりも低く抑えることができている(1.⑥)。平成28年4月に水需要構造の変化に対応した料金体系へと改定したことや、令和2年4月の平均改定率15.2%の料金改定により、経常収支比率や料金回収率の値は一定の水準を維持している(1.①⑤)。しかしながら、依然として節水機器の普及等による水需要の減少が見込まれることに加えてコロナ禍による社会経済活動の状況が経営に影響することが懸念される。老朽化の状況について、依然として管路経年化率は非常に高い(2.②)状況にある一方で平均値よりも高い水準の有収率を維持(1.⑧)していることから、適切に維持管理を実施できていると考える。今後も毎年約1%を上回る管路更新(2.③)を着実に進める必要がある。このような施設更新には莫大な資金が必要となることから、アセットマネジメントにより更新費用の平準化などに取り組むとともに、施設整備を計画的に進めることで、持続可能な事業推進に努める。令和元年9月に策定した経営戦略と位置付ける新たな「水道事業ビジョン」に基づき、今後も健全な水道システムを未来に繋いでいくために、経営基盤の強化に努めるとともに、施設整備を着実に進め強靭な水道施設の構築に取り組んでいる。また、令和2年4月から平均改定率15.2%の水道料金の値上げを実施し、経営基盤の強化を図っており、健全な経営を維持できる見込みである。引き続き、更なる経営効率化に向けて検討するとともに、3年から5年の周期で適正な水道料金水準の検証を行い、必要な見直しを図る必要がある。