経営の健全性・効率性について
①経常収支比率は100%を超え、単年度黒字を維持している。新型コロナ流行に伴う巣ごもり需要の影響もあり、昨年度に比べ5.06ポイント上昇となった。しかしながら、⑤経費回収率は100%を下回り、汚水処理に係る費用を下水道使用料収入で賄えていない状況が続いている。なお、本年度については新型コロナの経済支援策として基本料金免除を実施したことで下水道使用料が減少した影響も含まれている。本市の初期整備は平成元年度から平成15年度までに集中的に行われ、これに係る企業債償還のピーク期にあることから、③流動比率は100%を下回っている。引き続き資本費平準化債の活用や他会計からの繰入金等による財源確保の必要があり、厳しい資金状況が続くと見込まれる。これは、④企業債残高対事業規模比率が類似団体平均及び全国平均を大きく上回っていることからも明らかであり、集中的整備に係る償還の順次終了により当該比率は緩やかに改善しているものの、今後、老朽管渠の改築など更新需要の増加による影響が懸念される。⑥汚水処理原価は、類似団体平均値を下回り、比較的効率的な汚水処理運営が図れている。なお、昨年度比△1.94ポイントとなったが、主な要因は人員の削減によるものである。⑦施設利用率は、流域下水道接続のため、対象外となっている(H30より見直し)。⑧水洗化率は類似団体平均及び全国平均を上回るが、一定値で停滞していることから、さらなる水洗化促進にむけ普及啓発に努める必要がある。
老朽化の状況について
①有形固定資産減価償却率は、下水道事業の早期着手と迅速かつ集中的な施設整備により、類似団体平均よりも高い水準にあるが、②法定耐用年数を経過した管渠はないことから、③管渠の更新投資・老朽化対策の実施には至っていない。今後の集中した老朽化に伴う更新需要の増加に備え、平成29年度よりストックマネジメントを導入し計画的かつ効率的な維持管理に努めている。
全体総括
水洗化人口及び世帯数は引き続き増加しているが、その伸びは鈍化傾向にある。面整備の概成と人口増加の鈍化により、下水道使用料収入は頭打ちになることが予想される。令和2年度は、新型コロナの経済対策として基本料金の減免措置を行ったたが、その財源は一般会計からの繰入金(補助金)により賄っている。なお、新型コロナ流行に伴う巣籠需要により、使用料収入(基本料金の減免措置分を除く)が例年に比べ増加したことから、当年度純利益は過年度平均を上回る結果となった。集中的整備にかかる企業債償還が重荷となる状態が続いており、経費回収率も100%を下回ることから一般会計からの繰入金により経営が成り立つ状況にある。今後、更新需要の増加に備え、経営戦略やストックマネジメントに基づく計画的な取り組みにより安定経営を図る必要がある。