経営の状況について
環境と経済の好循環を図り地域の活性化と林業の発展に寄与するため、未利用間伐材による木質ペレットを発電資源とした「森の金太郎発電所」木質バイオマス発電事業を開始した。森の金太郎発電の年間電力料収入については、平成30年度決算の売電は太陽光発電のみであり、令和元年から安定稼働に向けて運転調整を行い徐々に増加したが、令和2年7月4日の発電所火災により運転が停止となり、令和2年度は3か月分の電力料収入となっている。純損益については3年連続で赤字収支となっている。よって経営状況は厳しい状態である。
経営のリスクについて
令和元年度から本格稼働を開始し、設備利用率については令和元年度に平均値を上回る約40%となっていた。しかしながら、火災により運転停止となった令和2年度の設備利用率は約22%となり、資源エネルギー庁が設定している木質バイオマス発電所の設備利用率が87%(専燃)となっていることから、稼働率の向上が大きな課題と言える。また、企業債残高対料金収入が高いことも経営リスクといえる。本発電事業は企業債を活用しており、補助金を除いたほとんどの整備費用を企業債で賄っていることから、20年間という長期にわたって企業債を返済していくこととなる。そのため、国の固定価格買取制度を活用した20年間におよぶ事業であることを踏まえ、発電資源となる品質の良い木質ペレットを安定的に供給し高稼働を維持して安定的な売電収入を得る必要がある。そして売電収入のみでは収支を安定させていくことが難しいことから、将来的に熱供給事業を開始するため、熱供給を必要とする企業の誘致も行っていく必要がある。さらに、FIT収入割合が100%と高い比率となっており、19年後の固定買取制度終了後に買取単価が下落することが予想され、当該リスクへの対応の検討も必要である。これらのリスクを軽減していくため以下の対応を行っていく。経営リスク回避①発電事業の運営は業務委託しており、安定稼働に不可欠な木質ペレットの品質向上及び安定供給を委託業者と協力して行っていく。経営リスク回避②毎月・毎年の稼働状況に応じて、想定試算をするなど収支計画を更新し経営方針について検証する。収支計画には設備の老朽化に伴う発電システムの修理費などを盛り込み将来予測に基づいた実現性のあるものとする。また、熱供給事業の計画についても、収支計画に盛り込み事業進捗を検証していく。経営リスク回避③19年後の固定価格買取制度終了後の運営・経営体制について、外部の有識者の助言を基にしながら検討していく。
全体総括
本事業は、再生可能エネルギーの活用や地域循環型林業の構築を掲げた本町の取組の中心に位置付けられ、一定の公益性を有している。また、一方で経済性の観点から、町民の財産である一般会計の資金を活用することを前提とした経営が難しいことも大きな課題となっている。これらの観点から、公益性と経済性を両立する公営企業による経営を引き続き行っていくこととする。令和2年度に経営体制や経営リスクの検討などを盛り込んだ経営戦略は策定したが、今後は安定稼働に向けたペレット燃料の改善、外部の有識者の意見を参考に定期的に収支計画を見直すことで、経営改善を図っていく。