経営の状況について
「経常収支比率」及び「営業収支比率」は、100%を上回っており、この黒字経営によって、今後の施設の老朽化対策に向けた更新投資等に充てる財源を、毎年度確保している。前年度と比較すると経常収支比率・営業収支比率は若干減少している。これは設備更新に伴う固定資産除却費の増などにより、前年度に比べ支出が増となったためである。また、経常収支における収益の大半を料金収入で賄っており、本業を主体とする健全な経営を維持している。「流動比率」は、100%を大きく上回っており、流動負債を支払う能力は十分に有している。「EBITDA」は、概ね安定して収益を確保している。前年度と比較すると若干減少しているが、これは支出の増などによる純利益の減のためである。「供給原価」は、平均値の2倍以上となっているが、これは、本県の城山発電所が地方公営企業唯一の揚水式発電所であり、電力需給が逼迫した緊急時等のみ発電する特殊な発電所であることから、年間発電電力量が少ないためである。なお、前年度と比較すると増加しているが、これは発電電力量の減によるものである。
経営のリスクについて
○水力発電について「設備利用率」は、平均値より低い値となっているが、これは本県の城山発電所が地方公営企業唯一の揚水式発電所であり、電力需給が逼迫した緊急時等にのみ発電する特殊な発電所であることから、年間発電電力量が少なくなるためであり、同発電所を除いて算出した設備利用率は30.0%である。前年度の31.4%と比較すると若干減少しているが、これは発電電力量の減によるものである。「有形固定資産減価償却率」は、計画的な修繕や一部改良等により、施設の大規模な更新を行わずに維持してきたことで減価償却が進んだ施設が多く、平均値を上回っている。特に本県の電気事業(昭和13年発足)は事業開始時期が早く、このことが有形固定資産減価償却率を上げる大きな要因となっている。「修繕費比率」は、事業開始当初の施設を維持管理していること及びダムの維持管理に必要なしゅんせつを行う費用が大きいことから、平均値を上回っているが、計画的な修繕を行っており減価償却が進んだ施設の適切な維持管理に取り組んでいる。なお、しゅんせつにかかる費用は、アロケーションに基づいて水道事業者も負担している。「企業債残高対料金収入比率」は、健全経営に向け企業債残高逓減に取り組んできた結果、平均値と概ね同水準に減少している。○太陽光発電について「設備利用率」は、前年度と概ね同水準であり、安定した発電実績を上げている。「修繕費比率」は、前年度と比較すると増加しているが、これは平成26年に稼働した谷ヶ原太陽光発電所の経年変化による維持費の増のためであり、前々年度と概ね同水準である。「企業債対料金収入比率」は、太陽光発電施設の整備に係る企業債の発行実績がないため、該当がない。「有形固定資産減価償却率」は、平成25年度の設置以来、償却が進んでいる。「FIT収入割合」は全て再生可能エネルギー固定価格買取制度の適用を受けているため、100%を維持しており、FIT適用終了(愛川太陽光発電所(H45)、谷ヶ原太陽光発電所(H46))後は、収入が変動するリスクがある。
全体総括
施設の老朽化により、修繕費が増えているが、料金収入を主体とする健全な黒字経営を継続することにより、今後の設備更新に充てる財源を十分に確保できる見通しであることなどから、全体として、概ね順調な経営を維持している。ただし、今後の電力システム改革の動向に注視しつつ、安定的な経営が継続できるよう取り組む必要がある。経営については、神奈川県営電気事業経営計画(平成26年~30年度)の中間年である平成28年度に中間点検を実施し、平成30年度までの財政収支の見通しや経営環境の変化による新たな課題とその対応について整理し、次期経営計画への反映に向けた中長期的課題を確認した。次期経営計画(平成31年~35年度)は平成30年度中に策定する。なお、太陽光発電所のFIT適用終了(愛川太陽光発電所(H45)、谷ヶ原太陽光発電所(H46))後の存続は、将来的な経営計画の策定の中で検討する。