経営の健全性・効率性について
本事業の特徴は処理区域内人口が215人程度という事業規模が小さいことに加え、本土から1,000㎞の超遠隔離島という地理的条件、台風等の厳しい自然条件が重なり、企業会計として収支のバランスをとることが困難な状況となっている。このような経営環境の中、経営健全化の一環として平成25~27年度の3か年をかけた料金改定の実施や、平成27年度から行っているコミュニティプラントの施設維持管理業務と合わせた性能規定・複数年契約による包括委託契約について、平成30年度より簡易水道施設も含めることにより、効率性を向上させた。また水道料金同様に基本料金を廃止した下水道使用料の改定を実施したことにより、①収益的収支比率は改善し維持している。一方⑤経費回収率、⑥汚水処理原価については汚水処理費の増加により増加傾向となっている。④企業債残高対事業規模比率については類似団体平均値と比較し高い値となっているが、処理区域内人口は増加傾向にあり収入増が見込め、地方債残高も同程度での推移が見込まれるため、比率についても減少傾向が続いている。⑦施設利用率が類似団体平均値と比較して低いのは処理区域の特徴として、民宿・アパート等の建築割合が高いことが影響していると考えられる。なお、処理区域内は全て水栓便所設置済みのため⑧水洗化率は100%となっている。
老朽化の状況について
個人設置の浄化槽については適切な管理が行われていない事例が多かったことから、市町村設置型の浄化槽事業として、平成16年に小笠原村浄化槽条例を施行し、平成17年5月に本事業を開始した。個人設置の浄化槽については順次村に移管を進め、平成22年度には、浄化槽の移管についてはほぼ終了している。事業開始後に新設した浄化槽の更新は、当分の間発生しないが、適切な維持管理に努めるとともに、移管を受けた浄化槽については、計画的に更新を実施していく。
全体総括
小笠原村では「汚水の適正処理、環境保全」を目標に生活排水処理施設整備を推進しており、世界自然遺産である小笠原諸島の公共水域保全に大きく貢献している。しかしながら、本事業については、処理区域内人口が200人程度、年間の使用料収入は460万円程度という非常に小さい事業規模のため、汚水処理費用を使用料収入のみで賄うことは現実的ではなく、一般会計からの繰入に頼らざるを得ない経営環境となっている。このような状況のなか、複数回にわたる使用料改定の実施や、性能規定・複数年契約の包括委託の導入など経営の健全化に努めている。また、平成28年度に策定した「小笠原村下水道事業経営戦略」の見直しや、令和6年度からの公営企業法適用に向けて準備を進めていく。