経営の健全性・効率性について
本事業の特徴は処理区域内人口が230人弱という事業規模が小さいことに加え、本土から1,000㎞の超遠隔離島という地理的条件、台風等の厳しい自然条件が重なり、企業会計として収支のバランスをとることが困難な状況となっている。このような経営環境にあるなか、経営健全化の一環として平成25年度から平成27年度の3か年をかけて料金改定を実施し、コミュニティプラントの施設維持管理業務と合わせて行っている浄化槽の運転管理・保全管理業務の外部委託について、性能規定・複数年契約での包括的な契約方式へ変更することにより維持管理経費の削減に努めている。平成29年度については平成28年5月から約1年続いた少雨による渇水のため、村民・観光客の節水努力や渇水終了後も節水意識の向上により水道使用量が減少したことにより、汚水処理量が前年度から717㎥減少したことが影響し、①収益的収支比率、⑤経費回収率、⑥汚水処理原価の数値が前年度と比較し悪化した。④企業債残高対事業規模比率については類似団体平均値と比較し高くなっているが、地方債残高については平成28年をピークに減少していくため、比率についても低下していくことが見込まれる。⑦施設利用率が類似団体平均値と比較して低いのは処理区域の特徴として、民宿・アパート等の建築割合が高いことが影響していると考えられる。また、村による分譲地整備等により、処理区域内の人口については増加しており、⑧水洗化率については類似団体平均値より高い数値となっている。
老朽化の状況について
個人設置の浄化槽については適切な管理が行われていない事例が多かったことから、市町村設置型の浄化槽事業として、平成16年に小笠原村浄化槽条例を施行し、平成17年5月に本事業を開始した。個人設置の浄化槽については順次村に移管を進め、平成22年度には、浄化槽の移管についてはほぼ終了している。事業開始後に新設した浄化槽の更新は、当分の間発生しないが、適切な維持管理に努めるとともに、移管を受けた浄化槽については、計画的に更新を実施していく。
全体総括
小笠原村では「汚水の適正処理、環境保全」を目標に生活排水処理施設整備を推進しており、世界自然遺産である小笠原諸島の公共水域保全に大きく貢献している。しかしながら、本事業については、処理区域内人口が230人弱、年間の使用料収入は430万円程度という非常に小さい事業規模のため、汚水処理費用を使用料収入のみで賄うことは現実的ではなく、一般会計からの繰入に頼らざるを得ない経営環境となっている。このような状況のなか、平成25年度から平成27年度の3か年をかけて段階的に使用料の改定を実施するとともに、委託業務の見直しによる維持管理費の削減を実施し、平成28年度に「小笠原村下水道事業経営戦略」を策定し、経営の健全化に努めている。