地域において担っている役割
当院は地域の中核病院として幅広い年齢層の患者さんを診療している。中でも、在宅療養後方支援病院として、在宅患者の急性疾患に対して入院治療他、地域医療連携によりかかりつけ医の診療支援を実施している。また、周産期医療にも力を入れているため、それに伴い新生児の患者数が多いことが特徴である。稲城市は高齢化が緩やかな方とされているが、高齢の患者も多くなってきており、昨年は80歳以上の患者が2割以上を占めている。
経営の健全性・効率性について
(1)費用の削減…「ベンチマークでの費用分析によるコスト管理」・「医療機器購入にあたって医師を含んだ委員会での検討」を行い、費用削減に努めた。(2)各指標分析…地域連携の強化により手術を要する患者の紹介が外科、整形外科等で増えている面もあるが、結果としては新型コロナウイルス感染症に伴う受診控え等により医業収益は減少した。しかし、代わりに都補助金及び国庫補助金が増額されたため経常収支比率は増加した。その他、患者一人当たりの単価が高い、外科、整形外科が増えているため、⑥外来患者1人1日当たり収益が前年度比862円増加し、11,970円となった。なお⑦職員給与費対医業収益比率が増加している要因は、施設基準申請のために常勤職員数を増やした結果、人件費の増に対し、収益の増が少ないことが要因である。今後は非常勤職員の雇用整理を検討していく。なお、④病床利用率については、新型コロナウイルス感染症の影響により受診控えや診療を自己中断したこと等により減少したことが考えられる。
老朽化の状況について
新病院開設より20年が経過し、施設の損傷や設備の耐用年数経過が進んでいる。累積欠損金がある中では、器械備品の購入や大規模改修を行うことは難しい経営状況であると考えている。そのため、計画的に施設・設備の点検や清掃を行い適切な管理を行い、病院機能の維持に努めている。また、通常業務時のほかにも災害拠点病院として災害時にも機能を発揮する使命があることから、引き続き施設・設備を常に健全な状態に保っていく。なお、③1床当たり有形固定資産については、高額な機器の更新等により類似団体と比較して高い数値となっている。
全体総括
「第三次稲城市立病院改革プラン」に基づき、健全な病院経営が継続的に行えるよう、中期的な見通しに基づいた経営を行っている。現在、診療報酬改定により、一般病棟入院基本料が再編・統合され当院は、急性期一般入院料1を、また新たな入退院支援加算1を速やかに対応し申請ができたため、入院患者一人当たりの単価が増えている。令和2年度は、新型コロナウイルス感染症に伴う受診控えや診療を自己中断したこと等により医業収支は前年に比べ大幅減となった。減少した入院患者数を回復させるために、アフターコロナを見据えた診療体制の回復が急務である。その他、医療材料費の削減や消化器センターの設置などの経営努力により、医業収支比率や経常収支の改善につなげたい。一方、本院が開設から20年以上経過していることによる施設や医療機器等の修繕費の費用の増加が今後の課題である。