経営の健全性・効率性について
当市の場合,経常収支比率は100%を超えて推移しており,健全な状態を保っている。また,流動比率も100%を確保し,キャッシュフロー上も良好である。しかしながら,令和2年度は新型コロナウイルスの影響により,下水道使用料が減収し,経費回収率が低下した。また,汚水処理原価については全国の平均に比べて高い水準にある。当市は,下水処理施設を有しておらず,県の流域下水道に接続している。その維持管理負担金が,下水道使用料で回収すべき経費の中で大きなウェイトを占めており,今後も増加が見込まれている。さらに,管路施設の老朽化対策経費も,今後増加が見込まれる。公共インフラとしての下水道を適切に維持管理していけるように必要な費用は確保し,適正な経費回収率となるよう,経常経費の更なる圧縮や業務の効率化を目指しつつ,使用料の見直しによる料金収入の適正化を検討する必要がある。
老朽化の状況について
平成27年度のストックマネジメント導入により,緊急度等に応じた老朽化対策の優先度順位付けが完了した。平成30年度からは,民間のノウハウを活用しながら限られた予算及び職員数の範囲で,下水道管路の予防保全型維持管理を目指す,包括的民間委託の業務が開始しており,令和2年度も令和元年度に引き続き,巡視点検,管路内の簡易カメラ調査,管路更生工事による改築業務などを実施した。管渠の老朽化が加速していく中,包括的民間委託の業務の重要度が高まっている。業務が進捗していくことによって,管渠改善率が上昇していくことに期待が高まる。今後も引き続き,ストックマネジメント実施計画に基づき,費用を平準化しつつ,順次管路施設の計画的な改築業務を進める。
全体総括
現状の経営健全度は,キャッシュフローの面も含めて概ね良好である。しかしながら,老朽化の進行等に伴う維持補修対応,流域下水道の維持管理負担金の増加等により,経常的経費は大きく増加していく見込である。これは,「経費回収率」の悪化や,「企業債残高対事業規模比率」の上昇などにつながる要素である。引き続き,経営戦略に基づき適切な事業運営に努め,健全経営の持続を目指す。