地域において担っている役割
地域医療支援病院として、主に循環器系及び呼吸器系疾患の高度・専門医療を提供している。さらに、第二種感染症指定医療機関として結核病床30床を有し、結核患者に対する医療を提供している。平成28年度に新設した新館棟には、感染症病床21床と埼玉県北部医療圏初となる緩和ケア病床24床を設置し、新たな医療需要にも対応している。加えて、埼玉県急性期脳梗塞治療ネットワークに連携病院として参加し、専門領域で救急患者の積極的な受入れを行っている。
経営の健全性・効率性について
①経常収支比率と②医業収支比率について、医師を十分に確保できていないことから、患者数が伸び悩み収益に反映されていない。加えて、人件費や委託料などが増加していることから比率は低下している。③累積欠損金比率は平成26年度に解消していたが、平成28年度に2.2%となり、29年度は15.9%に増加した。今後、収支を改善することで累積欠損金を解消していく。④病床利用率は、緩和ケア病棟が医師不足により患者数が伸び悩んだことから、低下している。⑤⑥入院・外来患者1人1日当たり収益はやや減少しているが、外来での術前検査や入院期間の適正化を徹底するなど、引き続きDPCの適正運用に努めていく。⑦職員給与費対医業収益比率は新館棟建設の影響で増加傾向である。今後は人員に見合う収益を上げていく。⑧材料費対医業収益比率は、SPDを導入した効果により低下している。
老朽化の状況について
①有形固定資産減価償却率はほぼ類似病院の平均値である。旧館である本館棟の劣化に留意し、修繕を進めていく。②器械備品減価償却率もほぼ類似病院の平均値である。今後、医療機器等を厳選した上で更新していく必要がある。③1床当たり有形固定資産は平成28年度以降、新館棟建設の影響により増加傾向である。増加の要因としては、主に手術室に設置した1,000万円以上の高額備品の購入が挙げられる。これらは高度・専門医療の提供に要する備品であるが、数年後の更新時期に備えて十分な医業収益を確保していく必要がある。
全体総括
心臓カテーテル治療数や肺がん手術数で全国トップクラスの実績を有し、循環器系・呼吸器系の高度・専門医療を担ってきたが、近年は人口減少・高齢化の進行や、近隣病院の高度医療提供開始など、当院を取り巻く状況が大きく変化している。近年は現行の「県立病院経営改善アクションプラン」に基づいて経営の効率化・健全化に取り組んでいるが、結核指定医療機関としての役割・責任を果たしながら、さらなる経営改善を進める必要がある。今後は地域連携強化により患者数や病床利用率の増加を図るとともに、新たに整備したハイブリッド手術室などの高度な医療機能を十分に活用し、引き続き積極的・効率的な事業運営を行っていく。