経営の健全性・効率性について
収益的収支比率は、償還の進捗による企業債残高の減少、不明水調査などによる水量確保で有収水量が増加傾向にあることから、全体的には回復基調にある。これまでの、経営健全化の取組を継続的に実施してきた成果と考えられる。企業債残高対事業規模比率は、償還の進捗、使用料収入などの営業収益の増収により減少傾向にあり、類似団体を下回っている。平成29年度は、決算統計調査表における一般会計負担額の数値に計上漏れがあり、比率が大きく上昇しているが、正しい数値による比率は580.83%となり,前年度比で減少している。経費回収率は、100%以上を確保し類似団体を上回っているが、分流式下水道等に要する経費など一般会計の繰入に頼った構造であるため、資本費平準化債等控除前の回収率を上昇させるため、使用料改定等の検討を進めていく必要がある。汚水処理原価は、分子である汚水処理費用は近年同水準で推移しているが,分母である有収水量が増加傾向にあり、類似団体平均を上回っている。水洗化率は、類似団体平均を若干下回っているものの、住宅・都市整備公団(現UR)によるニュータウン開発などの先行投資による引き上げで、県内では上位である。今後も、未接続者への接続促進を継続し、水洗化率の更なる向上に努めていく。管渠改善率は、平成29年度に老朽管渠の改築工事を実施した延長約600m分の比率が算出されており、類似団体と同程度の数値となっている。今後も計画的に改築・更新を進めていく。
老朽化の状況について
供用開始(昭和55年8月)から38年を経過し、施設の老朽化が進行しており、未普及解消事業から施設維持的な事業のウエイトが高まっている。既に、改築・更新工事の基となる長寿命化計画を策定し、ポンプ場施設の改築・更新を順次進めており、これによりライフサイクルコストの低減を図る。今後は、ストックマネジメント計画を策定し、ポンプ場・管渠施設の一体的な管理により、改築・更新の優先順位を定め、限られた財源を改築・更新に適正かつ有効に配分することで、施設の適正な維持管理、事故の未然防止など、市民の安心・安全の確保に努めていく。
全体総括
本市の下水道事業は,昭和50年に整備が始まり,市街化区域の整備は概ね完了し,現在、幹線管渠周辺の市街化調整区域の整備を行っている。経費回収率、汚水処理原価は、類似団体平均を上回っているが、これは、企業債発行額の抑制と償還の進捗による企業債残高の減少、上水道との料金徴収の一元化といった経営健全化の取り組みを継続的に実施してきた結果であると言える。今後は、施設の老朽化に伴う維持管理コストの増、人口減少や節水意識の高まりによる使用料収入の減など、厳しい経営環境が予測される。平成32年度からは公営企業法が適用となることから、固定資産台帳の作成による現有資産の適正把握に努め、老朽資産の優先的な改築・更新を進めていく。また、中長期的な経営計画である経営戦略を策定して経営の健全化を図り、安定した下水道サービスを継続的に提供できる経営基盤の構築を進める。