経営の健全性・効率性について
農業集落排水事業における経営の健全性及び効率性については、①の収益的収支比率が88%台ということで、単年度収支が若干の赤字となっています。④の企業債残高対事業規模比率については、類型平均の5倍を上回る状況にあり、収入に対して過剰な設備投資であったことの影響が色濃く反映されています。⑤の経費回収率についても36%台ということで類型平均を大きく下回っていますが、①の収益的収支比率との差が大きいことから汚水処理費が使用料収入だけでは賄いきれていない状況が見て取れます。⑥の汚水処理原価については、類型平均並みにまで落ち着いてきていますが、下水道事業に比べ高いため、施設の保有が大きいものと思われます。⑦の施設利用率は全国平均、類型平均ともに上回っており、設備投資に対する利用状況は適正な規模を維持しているものと考えられます。⑧の水洗化率については、平成27年度に末広地区を供用開始したことで類型平均を下回っており、その後5年経過した現在においても利用者が伸び悩んでいる状況にあります。以上のことから、類似団体に比べ本市の農業集落排水事業はかなり厳しい経営状況にあると言えるため、経営改善に向けた抜本的な取組みが必要となります。
老朽化の状況について
本市の農業集落排水事業は平成10年度から事業に着手し、平成13年度から供用開始しており、現在19年余が経過していますが、管渠の耐用年数である50年には達していないため、更新費用が発生しておらず老朽化は見られません。しかしながら、農業集落排水事業では地区毎に処理施設を有しており、初期に整備した地区の処理施設に係る機器類の修繕や更新が始まっています。今後は、更新時期が集中しないよう、優先度を適切に把握した計画的な対応が必要になりますので、計画を策定し定期的な維持管理による更新を行うことで、費用の平準化を図っていきます。
全体総括
本市の農業集落排水事業は健全性においてかなり厳しい状況にあり、経営改善が必要な状況にあります。これは、過大な設備投資により企業債残高が極めて多く残っていることや各地区に処理施設を有していることで維持管理費が掛かり増しになっていること等の理由により、使用料収入では賄いきれず収支バランスが崩れてしまっているためと考えられます。そのため、現時点では維持管理経費の抑制と使用料収入の増加が喫緊の課題となるため、今後については、通常業務における節制はもとより、下水道事業への施設統合や使用料体系の転換等も視野に入れながら大幅な経営の見直しをすることで、経営の安定を目指し事業を推進していきます。