経営の健全性・効率性について
平成31年4月1日より、地方公営企業法の全部を適用し、地方公営企業会計へ移行したことに伴い、平成31年3月31日をもって打切決算を行いました。収益的収支比率は、ほぼ横ばいで推移しており、表面上はあまり悪くない経営状況に見えますが、実際には単年度収支は使用料以外の収入によって収支均衡が保たれている状態です。また、経費回収率については、近年浄化槽設置基数の増加により使用料収入自体は増加していますが、類似団体・全国平均値と同程度の水準ではあるものの、50~60%とあまり高くない水準で推移しており、使用料だけで汚水処理費全てを賄いきれていないことがわかります。合併処理浄化槽の個別処理という特性から経費が嵩むことや、それに見合う使用料収入を確保できていないことに起因するものと考えられます。企業債残高対事業規模比率については、打切決算の影響を受けて上昇していますが、その影響を加味すると概ね例年どおりの水準となるものの、類似団体平均値と比較して約8倍と非常に高い数値となっています。新設事業が継続していることや、経費回収率が低迷している状況などが主な要因と考えられます。汚水処理原価は近年やや減少傾向にあり、類似団体平均値比較しても低い水準で推移していますが、管理対象の浄化槽数や供用開始経過年数などの違いにより事業体の事業状況により増減する要素があるため、単純比較できる指標ではありません。全国平均値と比較しても事業としての汚水処理費は妥当なものであると考えれますが、新設事業が継続中であり地方債償還額が増え続ける傾向にあることや経費回収率が50~60%台で推移している状況を考慮すると、今後も経費削減に努める経営努力が必要です。水洗化率はほぼ横ばいで、類似団体平均値を上回る水準が続いています。今後も水洗化率の向上を図るため、浄化槽設置に向けた啓発活動を継続していく必要があります。
老朽化の状況について
北斗市の特定地域生活排水処理施設の供用開始は平成19年度であり、浄化槽(躯体)の標準耐用年数は概ね30年です。まだ耐用年数を経過していませんが、ブロアー等の機器設備類の耐用年数はさらに短く、故障発生により不定期に修繕を要している状況です。標準耐用年数上では更新を意識する段階ではなく、維持管理と新設が今後の事業の中心となっていきます。供用開始経過年数から目立った老朽は進行していないと考えられます。しかし、耐用年数が過ぎたからといって、そのまま対象となる浄化槽をすべて入れ替えるというわけにはいきませんし、そのまま放置するわけにもいきません。重要なことは躯体だけでなく設備機器類の老朽化状況を的確に把握し、利用形態の変化や住民のニーズに着目し、それぞれの時期でベストな更新・修繕を判断したうえで対処していく必要があると考えています。
全体総括
北斗市の下水道事業は、特定地域生活排水処理施設事業のほか3事業をひとつの会計で経理しています。公営企業会計に移行し、発生主義の企業会計方式導入により、トータルコストを把握し経営状況をより明確にすることが可能となるため、これまでよりも詳細な分析を行い経営状況の的確な把握に努め、経営改善・健全化を促進していきます。また、事業の役割を踏まえ、持続可能な事業実施のため、施設の状況を客観的に把握・評価し、中長期的な施設の状態を予測しながら、施設を計画的かつ効率的に管理するために、「下水道長寿命化計画」の策定や「アセットマネジメント」を導入するなど、各施設の将来劣化予測を行い、管渠等の更新・修繕等を含めた事業費の平準化や過剰なメンテナンスを回避する管理能力の向上を図るなど、経営改善に向けた取組の推進に努めます。