経営の健全性・効率性について
収益的収支比率は若干の減少傾向にあり、100%未満で単年度赤字が続いています。また、経費回収率も減少傾向が続いており、類似団体平均類似団体平均を下回る35%程度で推移していることから、汚水処理費の大半を繰入金に依存していることがわかります。直営の処理場を所有しているため経費が嵩むことや、それに見合う使用料収入を確保できていないことが主な要因と考えられます。単年度の実質収支において資金不足を生じていないだけであり、経営状況については不透明な状態といえます企業債残高対事業規模比率については、若干の減少傾向にあるものの、類似団体平均値の2倍以上の数値となっています。既に整備が完了しており、普及率は今後伸びないことや更新時期など総合的に考えると、現在の収入規模に対して企業債残高が課題になっていることを意味し、将来世代に対する負担が高くなっていく可能性があります。汚水処理原価は年々増加し、類似団体平均値を上回っています。人口減少や節水意識の高まり等に伴う有収水量の減少により相対の処理原価が増加傾向となっていることが要因と考えられます。今後も経費削減に努める経営努力が必要です。施設利用率は、ほぼ横ばいで、類似団体平均を上回っていますが、今後もさらに接続促進の普及啓発・周知活動を行い、施設利用率を高めていけるよう努めてまいります。水洗化率は、若干の増加傾向となっているものの、類似団体平均と比較しても低い水準であることがわかります。増加の要因としては、施設整備が既に完了していることや新規水洗化の世帯が年間数件程度であることを考慮すると、未水洗世帯の自然減等による影響が大きいものと考えられます。今後も水洗化率の向上を図るため、下水道未接続世帯への水洗化に向けた戸別訪問の実施や、水洗化工事に対する融資斡旋制度の更なる周知など啓発活動を実施し水洗化の促進を図る必要があります。
老朽化の状況について
北斗市の漁業集落排水施設の供用開始は、平成11年度であり、処理場となる浄化槽(躯体)の標準耐用年数は概ね30年、管渠については50年となりますが、いずれも耐用年数を経過していませんが、処理場の機器設備類の耐用年数はさらに短く、設備によっては既に更新されているものもあります。標準耐用年数上では、管渠より先に処理場が更新対象となっていくことになります。既に整備完了となっており、維持管理と更新が今後の事業の中心となっていきます。供用開始経過年数から目立った老朽は進行していないと考えられますが、仮に更新するとなれば費用が嵩む処理場や関連設備に対して老朽化への意識を高めていかなければななりません。しかし、耐用年数が過ぎたからといって、そのまま対象となる施設や管渠をすべて入れ替えるというわけにはいきませんし、そのまま放置するというわけにもいきません。重要なことは施設の老朽化状況を的確に把握し、土地の利用形態の変化や住民のニーズに着目し、それぞれの時期でベストな更新・修繕を判断したうえで対処していく必要があると考えています。
全体総括
北斗市の下水道事業は、漁業集落排水施設事業のほか3事業をひとつの会計で経理する現金主義の官庁会計方式(単式簿記経理)を採用していますが、資産価値や事業毎の損益が明確にならないため、経営状況の把握や分析が難しい状況です。老朽化の進行に伴う施設の更新費用の把握・財源確保のためには、その前提として、現在保有している資産の価値、及び当該資産に対応する財源を把握し、適正な水準の料金体系を設定することが重要となります。そのため、平成31年度より発生主義の企業会計方式(複式簿記経理)を採用し、トータルコストを把握し経営状況を明確にしたうえで、セグメント情報を開示することにより経営状況の「見える化」に向けた取組により、経営改善を促進していきます。また、事業の役割を踏まえ、持続可能な事業の実施のため、施設の状況を客観的に把握、評価し、中長期的な施設の状態を予測しながら、施設を計画的かつ効率的に管理するために、「下水道長寿命化計画」、「経営戦略」の策定や「アセットマネジメント」を導入するなど、各施設の将来劣化予測を行い、管渠等の更新・修繕等を含めた事業費の平準化や過剰なメンテナンスを回避する管理能力の向上を図るなど、経営改善に向けた取組みの推進に努めます。